白日朝日のえーもぺーじ

ブログタイトルほどエモエモしくはありません

『天気の子』見ました。という体で語られる新海誠監督に対する愚痴のこと

 劇場で見なかった分、奮発してBD購入の40型ディスプレイ5.1chで観ました。
 あらかじめ言っておきますけれど、ぼくは新海誠氏の熱心なファンとかそういうのではないんですね。観た作品も限られている(『秒速5センチメートル』『君の名は。』あとエロゲメーカーminori時代のOPムービーとかです)し、にわかにもなんにもなれないんです。

 言っちゃあ悪いんですが、たぶん、このひとの作品って刺さってないのだと思います。キャラデザ一新して多分資金潤沢に仕掛けられるようになった『君の名は。』以降の青春ノリもそうですし、未視聴ですけれど『言の葉の庭』とかみたいなところ、というかそもそもBD持っているんですけれど、『秒速5センチメートル』もクソほど刺さってないんです。新海誠作品としての比較という点では、若干、秒速は分があるんですけれど、根っこのところが多分噛み合ってません。
 さっきも言ったんですけれど、刺さらないんです。
「じゃあなんで観るのよ?」っていえば、映像が綺麗だからですね。
 特にBD買ったその二作品はその理由で買うた感が顕著で、今ではそうでもないんですけれど、特に秒速の頃あたりの新海作品ってアレじゃないですか? これ今でも通じるか分からないんですけれど「新海光線」ってのがあって、同じ「映像が綺麗」でもジブリ作品の「よく動く」美麗さとか、京都アニメーションやufotable作品的な美麗さ、とはまたちょっと違って、たとえばひとつの光源とかその反射に対して紫とか緑だとか、実際に見えるものだとしてもそこを過剰表現したような光とか、あとこれも秒速で顕著なんですがブラーがかったホワッとした雰囲気光ですね。そういうのが好きで買ってたところがあります。

 新海光線というと、エロゲメーカーだと彼がお世話になったminonriって、実はそれほど多用したイメージないですね。それこそOPムービーだけに登場する印象が強いです。あ、いや、間違った。彼がメーカーから去ってからむしろ多用するようになったかもしれません。たぶん。あとはエロゲメーカーの老舗「Purple Software」あたりは新海作品流行って(第一段階的流行りというか秒速以後)から、少なくともムービーには光線使うようになるのがイメージにあります。
 あと結構なエロゲの背景で新海光線って使われることになったと思うんですけれど、個人的に印象深いのはU:strack『恋×シンアイ彼女』のそれですね。今さらなんでネタバレしますけれど、作品内容もちょっと秒速追っかけてた感じです。思い出深いですね。

 閑話休題いたしまして、新海光線ってなんかこう作品を綺麗に見せるだけではなく、どことなく情緒としてポエミィに見せる作用があると思うんですよね。実際にない光がそこらじゅう飛んでますので、なんというか、その光に意味を見出すではないんですけれど、意味が付属する光? というとしっくりくるかな。そういう語ってくる光を持つのがぼくの知っている新海作品なんですね。

 だからっつうかなんっつうか、業界としてのアレでポストジブリ(これポスト宮崎駿とは言わない)に新海誠作品が刺さったのってびっくりしました。細田守か超平和バスターズかくらいが刺さるのかなあと思っていたので。話ずれますけれど、庵野秀明作品んはポストジブリ多分ないんですね。ライバル企業はあってもそういう商品ではなくて、ただ、ポスト宮崎駿をできるとしたらこのひとだけなんだろうなとなんとなく思っています。
 これ連呼すると怒られるんですけれど、今も昔も新海誠作品ってとりわけ「絵がきれいなだけ」じゃないですか。(※あくまで個人的な感想です
 あとポエム。それのイメージでしかなかった。なにやらせても絵のきれいなポエムの作品で、そのためのマクガフィンがヒロインだったりなんとかする感じ。しかもその情緒は自分には刺さってこないんで厄介です。『秒速5センチメートル』5回くらいは観たと思うんですけれど、さいしょの「桜花抄」で満足してあとは流して観ながら、最後に山崎まさよしのミュージックビデオにするとかそんなことばっかりやってるんですね。

 で、ここまで書いて気づいたんですけれど『天気の子』の話をしていませんね。
 もうここまで書いた通り、感情的には刺さってません。しかもタチが悪いことに『秒速』とかとは別ベクトルで刺さってないのです。
 今の……というか『君の名は。』以降の新海誠の作品的なエモさって、どっちかというと超平和バスターズ的なそれなんじゃないかなあと思うんですよね。あそこの映画は未視聴ですけれど、なんかこうちょっとこじらせながらストレートに青春していく感じといいましょうやら。当方、35歳童貞、青春モノを上手く刺すにはなんとなくコツが必要な身体になってしまいまして、まあこれがエロゲだったら刺さったのかという可能性についても脳内で試算したんですけれど、これもまたやや絶望的ですね。
 知っている範囲では内容がエロゲっぽいって話をした視聴者も結構いたと思うんですけれど、まあ割と履いて捨てるくらいにはこのヒロイン像はあったと思います。っていうかアニメ絵とかアニメ映像だからそう思うだけで、己の消化してきた創作物にああいう消えていきそうなヒロイン像と、それを追いかけてなんとか捕まえる主人公ってなんども見たことあるでしょ? 思い出してください。例示はしません。各々のそれで良いんですけれど、個人的には「陽菜さんかわいい」ってのが感覚として出てこなかった、かわいくないとも思ってない、好意的には思うんですけれど、主体的にどうにかしてやりたいみたいな感覚がまるっと出なかったんですね。白基調の服が可愛いねくらいまでしか言えなかったのです。

 かわいいって消費するには二時間って短いんですね。たぶん、今まで見てきたアニメ映画全部でそう思っていると思うんですけれど、ヒロイン単体かわいいは行けた記憶がないんですよ。サービスでそう言ってることはあるかもしれませんが。
で、さっきエロゲの話が出ましたが、エロゲにしたら刺さったんじゃないんですかという試算ですね、これもまたやや絶望的です。尺的な愛着は稼げるとは思うんですけれど、さっきの話に戻って何度も見たヒロイン像じゃないですか? そして、まるっと天気の子としてエロゲにしていく上で絶望感があるのは映像が爆裂的に綺麗なことです。俺に刺さるとしたらもっと、予算潤沢じゃないほうが良かったと思います。エロゲでという試算なら、線画まんまみたいなやつに色鉛筆か水彩で彩色みたいなタイプの絵でやったほうがエモのブーストがかかりますし、そういうもののほうがぼくだけの陽菜さん、みたいになったのだと思うんですよね。それにしても、たぶん、夏美さんのほうがかわいいとか言ってたんじゃないかなあ。
 さらに話をきちんと戻して『天気の子』をアニメとして語るにしても、夏美さんのほうが愛着あります。最初にきちんと仲良くなったからかもしれないんですけれど、夏美さんの主人公への気持ちのほうが自分的には噛み合いますし、別にそのルートが見たいとはお遊び程度しか言ったり思ったりしないんですが、夏美さんの持っているキャラクターとしてのバックボーンのほうが好きだし、あのひとのおかげで帆高応援してやりたいってなったくらいです。

「陽菜さんかわいい」はね『天気の子』観ても遊び程度の気持ちでしか言わなかったと思いますし、主人公の帆高との関係性も別に「うん、カップル成立」くらいの感じです。強いて言えば凪きゅんのほうが股間にキュンキュンくるものがあったかも知れません。(今読み手さらに減ったな)

 さて、キャラ感と俺個人的な新海誠履歴の話はここまでにして、映像としての『天気の子』なんですが、爆裂的に美麗でしたね。雨粒が落ちる描写やら俯瞰的な東京やら線路駆けていくときの描写とか、そもそも最初の東京に来たぜ感のバーニラバニラ周りのあれとか、もうおら東京さ行ぎたくねえなあってなるくらいリアリティ出せてましたよね。特にディズニー的なものであるとか3Dであるとかを覗いたら、アニメーションとしてのリファレンス作品度合いは『千と千尋の神隠し』以来くらいの感じで出せてたんじゃないでしょうか。ぼく個人はリファレンスは『天気の子』でいいと思います。現時点では最高峰、と言い淀みもするんですがこれで。
 それとはまた別に映像の話で、多分『君の名は。』からそうで、今回さらにって感じですけれど、露骨な新海光線って減ったと思いませんかね?
 あれもうちょい露骨に出してくれたほうが個人的には好きです。『天気の子』も『君の名は。』も新海光線がやや折衷案的になっていて、それが個人的に惜しいですね。かといって、秒速ほどまでブーストかかってんのはさすがにお腹いっぱいなんですが、あれが映像としての一種のポエムではあるので、二時間までの映画でやり続けるならヒロインとかどうでもいいんで(と言うと全四方から殴られること請け合い)もうちょい光線をポエムっぽく使った新海誠監督最新作をなんとなく期待して感想の結びとさせていただきます。

『9-nine-』シリーズのこと

『9-nine-』シリーズはエロゲメーカーぱれっとの分割方式ながら現在最新作のエロゲですね。
 一応、2020年4月末発売の『ゆきいろゆきはなゆきのあと』でシリーズ完結っぽいです。
 シリーズ最初の作品である『ここのつここのかここのいろ』が2017年4月末、
 二作目『そらいろそらうたそらのおと』が2018年4月末、
 三作目『はるいろはるこいはるのかぜ』が2019年4月末、
 とまあ、プレイヤー的には4年かけて完結みたいな感じですね。
 ぼくはシリーズ全作品出てからのプレイヤーなので、継続プレイヤー的な待ちに待ったシナリオ完結とかあんまりその辺の感慨はないです。フルコンプ体感50時間くらいのエロゲを12000円で買ったみたいな感じで、面白さ抜きにしてのコスパはふつうに良いかなと思います。15時間フルプライス(9000円前後)で内容アホのエロゲもあるにはあるので(アホの子エロゲも物によっては好きですが

 買った理由は元々妹ものエロゲが好きでシリーズ二作目の『そらいろ~』のヒロインである新海天(にいみ そら)がかわいいらしいことを知っていたがスルーしていたことと、いくらか前の同ブログ遡ったら感想出てくる『ワールド・エレクション』ってエロゲのクルルってヒロインが声込みでやたら好きで、その声優さんが沢澤砂羽さんだったところから、最終的に天の声優が沢澤砂羽さんと知ったことですね。
 最初は二作目だけやろうということ考えましたが、ものの感想スペースにぜひ最初の作品からみたいなこと書いてあったのと時間に余裕があるひとだったのでもう別にいいやと、まず一作目からやろうということにしました。
 天のかわいさは彼女がメインの『そらいろ』やらずとも一作目でもう測れますね。かわいいです。兄に対するウザカワ(デレ)ヒロインって感じなんですが、掛け合いのもう演技の振り幅が良くて、「お兄ちゃん好き好き~」で押す子でも「ツンデレギャップ妹」で押す子でもなくて、先述の沢澤砂羽の演技のおかげもあって、日常会話の由無し事から楽しめる。要はなんでもない話してるのに会話途中で飛ばして聞いたりしないみたいな感じになります。もちろんライターさんの掛け合いのセンスもあるんでしょうけれど、それも込みで活きていたのは天でしょうね。主人公との漫才がシリーズ通して面白かったです。

 えー、ここから先はネタバレとかするかもしれないし別にしないかもしないけれど、4作目まで込みの話ってだけでネタバレになりますってくらいのひとはブラウザのタブからペッしてください。それはするので。まあそういうひとには記事の開始時点でもうネタバレあるのかもですね。

 とりあえず、天の可愛さの話の続きですね。えっとこの子、声優さんの演技込みでキャラクターの定位が爆速です。定位が爆速というのはつまり、そこにいる感がすぐにつよつよってことですね。なんぼか掛け合いしたらすぐそこにいます。エロゲ妹としては割と特殊なヒロイン造形してる印象ではあるので、性格の掴みどころ、という意味では意外とそこまで素早くはないと思うのですが、いるなあ感はすぐ得られます。そしてこのバカみたいな掛け合いやってたいなってなるまでは爆速ですね。
 特殊なキャラ造形ってのはアレですね、基本的に悪友と妹キャラとヒロイン混ぜこぜにしてるって感じで主人公と天というキャラ間ではもう互いに口が悪いです。兄妹互いに、ときに「おいおいほにゃららしてんじゃねえぞてめえ」的なことを言います。その温度感は兄妹間のじゃれ合いの範疇なので、そんなところに兄妹としての地が出ちゃいながら話してる感じがかわいいんでしょうね。他のエロゲだとなんだろな……。パッケージング的にはFrontwing『ゆきうた』のカモンブラザーさんかもしれないんですが、まあこの種の会話するヒロインってどこかのエロゲでも見た気はするんすよね。多分バカゲーか泣きゲーです。泣きゲーだったら多分シリアスとの緊張と緩和が丁度いいからでしょうね。
 とかくアホの子に分類される妹ではあると思います。別にアホじゃないんですけれどね、主人公との掛け合い兼じゃれ合いがアホくさいだけで。人間的には察しが良かったりするし、兄以外にはそこそこおどおどしたりもする子で兄以外のキャラ込みでの振る舞いもかわいいです。兄とはバカできるのに、それ以外のキャラだと一歩二歩引いちゃうみたいな、そういうのもありますね。ヒロインの中でも序盤っていうか一作目のメインヒロインとして出てくる九條都(くじょう みやこ。以下、みゃーこ先輩)とは比較的早く仲良くなりますけれど、三作目の春風さんとか四作目の希亜とかは距離感多少ありますね。
 余談ですが、主人公である新海翔(かける)に対して、にぃに、にいやん(このふたつをメインで使う)、さらにお兄ちゃん、兄貴、お兄様、兄さん、お兄たま、兄上までこの天というヒロイン単体で登場しますね。単体だと記録的なやつではないでしょうか。律儀に一個一個数えていたのはぼくが馬鹿だからですが、見落としあったらコメ欄なりにでもよろしくお願いします。
 ギャップのかわいさ抜きにしてみたら天、主人公、みゃーこ先輩の三人で掛け合い回すのがいちばん安定感合ってかわいいです。みゃーこ先輩までは天もいじり合いが楽しくできているようなので。ちなみに俺がプレイ前に「天」に期待していたのは、もうちょいスローな掛け合いする子だったのですが、そのへんはもう最初の方でどうでも良くなりましたね。天かわいいだけでもうちょい話進めていっても良いんですが、その辺の話をこうブーストつけて話すのって意外と苦手なので、紙幅的にもこんくらいにしときます。

 そんで、残念は残念というか分かりきってるネタバレな話ですが、天の登場度合いはメインヒロインである『そらいろ~』がマックスで、そのさきは微妙になっていきます。『ゆきいろ~』がいちばん存在感ないです。というところまで書いちゃったので、挽回してかわいさの話もうちょっとすると、毎日いっしょの家にいて週末ゲーセンに遊びに行きたくなる感じです。一家に一台新海空です。ほんと毎日いっしょにふざけあっていたい。

 で、シリーズ全体の話もなんとなくしていくんですが、四連作であり、お話としては事実上一本道というシステム上、最初の作品が面白さ的にもヒロインのかわいさ的にも弱くなります。このへんからはいよいよちゃんとネタバレしていくっぽいので、もうこれからプレイしていく気あるひとはここから先読まないでいいです。やる気あるけどネタバレ参考でなんとなく買う判断するひとか既プレイ民がによによ見るブログになります。

 ちょっとだけ出てきましたが、みゃーこ先輩は割食ってます。第一作で初登場シーンからゲーム終了まで一番短いわけですしね。そもそも第一作の時点でライターの趣味かみゃーこ先輩より天に多少(と言わずだいぶ)偏ってるんすよね。天のかわいさの話で言ったみゃーこ先輩と天と主人公で三人で回すのが安定、みたいなの言っちゃったのもお察しなんですが、みゃーこ先輩本人の出番も割と天に食われていて、ただ、それ込みでかわいいのも事実って感じです。ただ、某感想サイトでみゃーこ先輩をゆずソフト『サノバウィッチ』の綾地寧々さん的真面目っ子ヒロインに評して高評価してるひといましたが、寧々さんは冒頭からのオナニーでどがつくフックあったので、こういうのないのがすでに惜しいんですよ。
 なんにせよ一作目である『ここのつここのか~』はもうなんもかんも割食うしかないんです。シナリオ的にも伏線は張るサイドですし、某感想サイトでも点数は四作中一番低いですし。ただ、それにしても評価は高めです。これは実際単体で見ても結構シナリオ面白いからです。それでも、後味の悪い展開の多さ(溜めと評しても良いんですが)といい、巨乳ヒロインらしいのにプレイ中ぼくが忘れるほどのみゃーこ先輩のヒロインとしてのフックのなさといい、割食ってることといい、もうなんか一作目はもったいないというか、Twitterの会話でも出てきたんですが、シリーズの有料体験版って位置になっちゃうんすよね。
 そうそう、良い忘れていたんですが、この作品は異能でバトル要素ありのエロゲとなっていて、日常だけだとどうしても片手落ちになります。ただ、キャラや設定紹介しながら進んでいくので、作品の持ってるキャパと物語の盛り上がりどころと、色々惜しくならざるを得ません。というわけで、『ここのつここのか~』単体はもう、個人的評価として100点満点から言ったら70点台までです。みゃーこ先輩自体の評価も同じくらいになりますね。天が嫌いなひとだと天とよく絡むのでそっから減算されるけれど、真面目系だし穏やか属性で好きなひとはもっと好きだろうしと思います。

 でーこっからいよいよのことネタバレ臭強くなりますが、シナリオライン的に異能とかにプラスして「死に戻り」とか「ループもの」というより、Keyの『Rewrite』とか、未プレイですけれどアニメでなんぼか見た感じ、エロゲでいうその手の祖の『YU-NO~』とかみたいな感じになります。Rewrite的にはシナリオの枝みたいなこと言いますし、というか『YU-NO』アニメとの比較だとYU-NOまんまっぽいところも感じました。あとこれも未プレイ民なんですけれど、たぶん『シュタインズ・ゲート』『リゼロ』とか好きなひとは好きなんだろうと思いますね。もうこの作品直截的に言うとBADなシナリオにあたってもその前からやり直していくアレです。この要素を一作目だとほとんど贅沢に使わせてもらえないんですよ。だからもったいなくなるのはしょうがないんですよ。

 あんだけ天かわいいかわいいって言ってたけれど、二作目『そらいろ~』はシナリオの恩恵はまだ弱いです。さらにいうと、イチャつきとかデレることがブーストになるとかそれほどあるキャラ造形ではないので、天かわいいけれど、普段どおりでいいっちゃ良いんですよね。
 実妹エロゲーが好き、なんなら背徳もちょっと好き、やや病みブーストかかるの好きってひとには、エロゲルートとしての「新海天」はちょっと良いバフかかります。そういう嗜好がなければ別に普段の掛け合いだけで楽しめるというところに良さがある天はまあ100点以上の子ですね。散々激賞してますし、ただ、先程の一作目通りこの子は二作目のメインヒロインなので、シナリオの後押しはまだどうしても弱いです。それでもかわいいんだから天はいい子ですね。お兄ちゃん孝行だし多分作り手孝行です。この子でだいぶ引けた。ぼくがこのエロゲ買った理由が天だったこともその証左ですね。
 ただ、天の好評価込みにしても、某エロゲサイトの点数同様この作品自体は80点くらい、天への甘いところ抜きにしたら個人的にはもうちょい低くつける……ってことも意外とないんですよね。これ以上プラスもないがマイナスもないと思います。天がもっと好きなひとには登場回数多い時点で加点来ます。個人的にはカモンブラザー的なノリのエロ以外のエロ周りの雰囲気はむしろ好評価要素ではなかったので、そんな感じです。

 ほんで、三作目と香坂春風(こうさか はるか)先輩の話になっていきますね。物語はこのへんから盛り上がりが良くなってきます。二作目までは異能バトルとラブコメで死に戻り要素はそこまでなんですが、この辺からは張った伏線とか増やした登場人物とか潤沢に使えていきます。敵対するキャラ(蓮夜先輩に敬意を評してそのまま)「リグ・ヴェーダ」勢とかうまく回せます。というか、この作品のメインの香坂先輩はそもそもが最初「リグ・ヴェーダ」所属です。その点でキャラクター同士の絡みはどんどん贅沢になっていきますね。うーんいっそ、三作目がいちばん贅沢とか潤沢かな。分からなかった敵の裏のアレとかそういうのどんどん増えるし、もうネタバレありきなのでいうけれど、沙月先生がまさかのボスだったなんて(これは4作目でもっと色々派生しますが)みたいなのとかとりあえず、いろいろどんどん贅沢に伏線回収とかキャラ増加とかしていきます。ヒロインである香坂先輩は二面性があるっぽくて途中まで掴みどころがないんですね。それこそそのでかいおっぱい掴むしかない(シナリオ上でもそうなるの笑う)んですが、巨乳で背が高めとか、本来なら苦手要素になりそうなのも忘れて、割と作品一~二で主人公好きになるのにシンプルに筋が通ってるというか、本人陰の者ながら本人からすると一番最初にちゃんと仲良くしてくれたみたいな感じで、デレていくのが加点しやすかったです。ヒロイン的にまあなんの文句もなくかわいく、本人の異能も結構平和めにチートでそこも良しでキャラクターとしてはふつうに80点代後半くらいの感じですかね。
 一方作品に関してですが連作なのでもうこのあたりだと作品単体って評価がしづらくなりますね。良くも悪くもここまでやった評価になる気がします。なんでここまでやったで評価すると100点近くくらいです。なんにせよシナリオが贅沢だったしフックとかいい意味での裏切りもそこかしこにあった気がします。贅沢に異能バトルが楽しめるって感じです。

 そうして四作目なんですが、これは単体だといよいよ評価しようがないですね。単体であえて評価しようとすると、個人的には二作目の天より低くなると思います。というか、どうしたってこれまでありきで、構造上の大きなネタバレがどんどんキャラクター関係性は贅沢には使えるんですが、どんどん閉じていくんですね。その辺が燃えるは燃えるは分かります。ただ主人公とヒロインの結城希亜(ゆうき のあ)と構造で成り立って、燃えるところぼっこしぼっこし置いた感じが強くて、一方で燃えるけれど、このシナリオ初期ヒロインのフェードアウト感は強くなるんですよね。希亜はいいです。ちっこくて、ネコ好きだけれどあんまり懐いてもらえなくてしゅんとしたり、香坂先輩の異能で懐かせてもらえてよろこぶのもかわいいですし、厨二臭いけれどそこにも理由があったり、少々真面目っぽいというか力が入りすぎるからとそこ修正するために気の抜けた方にいくみたいなデレもいいですし、敵に勝てるかなどうかなってとこでパーティごと絶望的に死ぬのもいいです。ヒロイン単体だとどうかな90点くらいかな。これまでのシナリオっての込みにすると結局100点近いです。
 ヒロイン単体で天とやり合えるのは個人的には希亜くらいしかいないと思います。あとは、趣味でサブヒロインの誰かが好きとかそういうのなければ、一位か二位にしか置きづらい。完結作品のヒロインなのでそりゃいちばんおいしいんですよ。ヒロインとしてはいちばん贅沢にできるんですよ。登場は一作目の時点で出ていて、色々溜めとか伏線とか交流が利くんだもん。贅沢できる。あの厨二っぽい振る舞いが実はとかいうのに、時間かけられる。おいしい。

 で、個別ヒロインは好評価で良いんですが、シナリオのルート単体はそんなに好きではないです。読めるという意味ではそりゃ読めるんですが、さっきも言ったとおり贅沢にぼっこしぼっこし燃える展開置いていちばんおいしい伏線使ったりするんですけれど、ほんとにどんどん閉じてくんですよね。それがあんまり評価できないのです。

 ただ、シリーズ全体でいうともう起承転結の結です。そういう意味なんでもう設定の贅沢し放題ですし、どんどんドライブかかっていくんですよ。で燃えます。何度戦っても勝てない敵に何度でもやり合ってって立ち上がって戦ってく。主人公しか使えない異能ばんばん使います。それ使って勝ったかと思ったら見落としが合って負けてさらにやり直して、みたいなそれを高サイクルでやっていくんで、ボルテージマックスですよ。お、勝てるか? いや、勝つる! いや、負けた。まだやれる。やるぞ! 勝つまでやるぞ! みたいなペースでやっていきます。やってるうちはそりゃ楽しいですぞ。本当。そんで、最後はやっぱりキャラクター全体でラスボス倒して大団円ですね。祝勝会までやるおまけつきです。
 ただ、ヒロインとして選ばれたのは綾鷹でした。じゃなくて希亜でした。そりゃそうです、単体でいうと表題的なヒロインなので。でもシリーズとしては最後の最後なんだから、シリーズ通してプレイヤーのいちばん好きなキャラ選んで結ばれるみたいな贅沢なサービスやってくれたら良かったんでしょうけれどね、それでも希亜はかわいいんで良かったですね。逆転サヨナラでみゃーこ先輩ヒロインに選んで最後とかだとポカーンになりかねないですし、それ希亜でいいというか、希亜がいいんです。天あんだけ好きって言ってますがそれでもややポカーンしそうですもん。

 で、この四作である『9-nine-』エロゲシリーズ全体の話に移行していきますが、全体評価でいうと、90に限りなく近い89点くらいですかね。天ルートもうちょい後ろに引っ張ってたらもうちょい加点したんでしょうね。この89点は既作品で90点以上つけちゃった思い出の作品がいっぱいあるので、それまで超えるか競るかみたいな話すると、そこまではいかなかったという話です。ただでも、この作品シリーズが最初の傑作だったひとはもちろん100点付近つけちゃってなんらおかしくないと思います。この辺は今までのエロゲが90超えつけさせてくれなかったんです。もうちょい冷静かつ素直に評価つければ、もうちょい上です。色々と演出も良かったし、色んなキャラの声も良かったですし、あえて表名義調べませんが多分相当豪勢なことになってますし、主題歌のシンガーは全編米倉千尋で多分作品ごとに違いますし。豪勢で贅沢なことになっていて、シナリオの瑕疵もほとんどない、よくこの贅沢なシナリオ回せたなと感嘆するアレでしたし、天はじめかわいいヒロインはいっぱいいたし。ただ、ひとつだけ言うと面白かったけれども刺さりどころというか個人的なエモらしいエモはなかった、泣いたりそういうのはすんでのところでなかった。

 さて良くも悪くも一挙でやれちゃったので、待ちわび感はない。これはどうなんでしょうね、シリーズ一作目発売からじっくりとゆったりとやったひとには待ちわび補正かかるんですかね。まあ多分ぼくみたいに最後まで一挙で一作感覚でやれたほうが贅沢ですし勢い加点もしやすいでしょうね。
 なにはともあれ、『9-nine-』シリーズ良かったです。笑える日常あり、ラブコメあり良い異能バトルあり、死に戻りあり、ルートの枝を俯瞰で見るみたいなのにも燃える勢にも燃え燃えしくてよかったです。

 たぶん、作品全体を評価するという点だとよくできた『Rewrite』とかそういうのが存在したとすればこんなん前後のものになれたんだと思います。あとで加筆修正するかもしれませんが、そんなところです。今日のところは以上。

 

ゲスの極み乙女の話


ゲスの極み乙女。 - ロマンスがありあまる

 最近、暇があったらゲスの極み乙女と元ちとせばっかり聴いてるんですけど、このひとたち天才ですね。売れ方とかフロントマンの絵音くんのスキャンダルとかで、なかなか距離取ったりして食わず嫌いみたいな状態になっていたんですけれど、この一曲だけでも分かる素晴らしい音楽をつくるバンドなんですね。やっていることはポストロックやジャズに、EDMなどなど他ジャンル横断するセンスのあるインストバンドみたいなものに歌を乗っけちゃったっていう、とてもその辺のバンドに真似できないようなことをやっています。
 歌単体も良いんですが、各曲演奏が素晴らしい。切れ味あるドラムにベースライン、しかしいちばんすごいのはウワモノの二人、ギターと鍵盤の演奏とアレンジですね。
 ちょっとなにを考えたらこのフレーズを思いつくんだろうというような有様です。それでいて、アレンジはジャジー、テクニカルなフレージング、歌メロはすごくキャッチーみたいなことをやるんです。あと、エンジニア志望だった目線でいくとこのバンドのミックスっていわゆるキャッチーなJ-ROCK的なボトムラインの軽さをしていないんですね。低音がきちっと鳴る良いミックス。まだ『両成敗』と『ストリーミング、CD、レコード』しか聴いていないんですが、ほんとうにやっていることは天才の所業ですね。聞かず嫌いは良くないですね。

 

両成敗

両成敗

  • 発売日: 2016/01/13
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ストリーミング、CD、レコード

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  • メディア: MP3 ダウンロード
 

アルコール依存症病棟入院のこと その2

 さて、前回はアルコール病棟入院の導入部ですね。
 今回は入院のシステムとプログラムのお話になります。

 前回書き忘れていましたが、入院の際は採血や心電図など軽い健康チェックが行われます。それが終わると病室への案内の前に、各種書類の捺印とかサインとかその他いろんな説明ののち、持ち込み荷物のチェックが行われます。ハサミとか刃物とか火気は当然持ち込み禁止ですね。鼻毛用ハサミとかカミソリの日常生活品もナースステーション預かりになり、使用の際は許可が必要です。なぜか爪切りは許可降りました。
 基本的には着替えとか病棟で必要になるスリッパ、そういったものが主な持ち込み品になるんですが……紐靴だと紐預かりとかズボンに紐が通っているものならそれも、ズボンのベルトやらバッグの肩掛けも預かりになります。これは4日後返却になるんですが、そのへんについては後述するシステムの関わりがあります。まあ安定していない入院初期とかだと紐類も自殺に使われちゃったりしかねないっていうことなんでしょうね。うっかりするとここでズボンがズルズルになります。(一応、ズボンのひもに関しては持ち込みお断りとかもサイトに書いてないんですけれど)自分の場合はぱつぱつのデニムとゴムの寝間着だけなので問題なし。紐類全般預かりなので、電気シェーバーの充電器とかも預かりの対象ですね。電気シェーバー本体はそのまま許可下りました。前回述べたケータイなど外部への通信機器もここで預かりになります。(というか持って来ちゃだめなんですよ)

 荷物チェックが終わると、いよいよ入院する病室案内ですね。ここはリセマラなし(ゴネるか他の患者さんとトラブればあるのかな)のガチャです。一応、ヤバいひとと同室さんになったらどんよりムードの入院生活(都合2回入院した剛の者ですが、一度目はガチャ大当たり、二度目は微妙かなという感じ)できっちりとしたひとと同室になれば穏やかな入院生活です。さておき、ここで担当する主治医とかナースも決まりまして、しばらくしたらナースのひとも挨拶に来ます。付き添いのひとといっしょに入院したひとは、このへんで同室のひとやら看護師さんへの挨拶やら色々世間話とかします。
 そういう時間も終わると、入院時に自主的に行わないといけないことの説明とか入ります。がこの辺までだらだら色々長かったんで割愛。

 さて、うちの病院で依存症治療で入院するにあたっては「行動責任範囲」というのが設けられています。これが1~4になるほど、入院中の行動の自由が利くというものです。
 まず入院して4日は「安静期」といって行動責任範囲は1。病棟から出られませんし、基本、部屋のベッドで各々依存症のテキストでも読んでいてねという期間。まあアルコールのひとなら解毒が必要なひともいるでしょうし、プログラムにも一切参加はありませんが、もらった座学用のファイル(買わされます)の宿題をこなしたり、患者個人の依存歴やらを反省する期間になります。自分がタバコ吸わないから分からないけれども、確かこの期間は当院の喫煙スペースに赴くこともできず、完全禁煙です。
 っていうかそれくらいできなくて依存物への反省もあったもんじゃないだろうですしね。
 アルコールのひとはこの期間毎日離脱(禁断)症状チェックと、少なくとも必要日数は離脱症状防止薬の「セルシン」が処方されます。自分の場合は、これ処方されても初日は離脱症状で結構派手な悪夢というか幻覚見ます。そういうのも抑える薬ではあるんですがね。幻覚の詳細については面白い話ですが、「快」の話ではないのでこの詳細も割愛。(聞きたければコメ欄行きですね)

 安静期はこれ守るひとあまりいないですが、ホールで行われる食事とかトイレ以外は自分のベッドにいることが義務付けられます。一応、病棟の本棚には依存症やAC(アダルト・チルドレン)などなどまつわるテキストも置いてあり、病院から渡されたテキストをさっくり読み終えてしまった向きにもたくさん読書が可能です。ま、依存症関連書籍関係なしに所蔵してある小説とか漫画読んでても良いんですけどね、色々在庫ありますし。ちなみに図書の持ち込みは禁じていないので、各々の棚に好きな漫画持ち込んで詰めてそれを読んでいてもよし。
 まああくまで自分の話だと、もらったテキストさっくり読んで、ファイルの宿題(飲酒歴を反省するレポートを書いたり、座学のちょっとした準備がある)をこなしたら、座学用のファイル全部先に目を通して、興味のある関連書籍類もがっつりあたるって感じですね。真面目さんタイプです。不真面目さんは依存歴振り返りの宿題しかこなしません。宿題は担当看護師との面談によるチェックが入り、依存歴反省のレポートは、同じプログラムの患者さんの前で発表します。
 というそれまでの流れを行って、ここから行動範囲2の「準備期」に入ります。
 ここでは先述の紐類などの返却や、行動範囲が病棟から病院内になり、売店とかにも看護師の付き添いなしで行けるようになります。身体を使うとか屋外作業をする以外のプログラム(要は座学)にもここから参加です。ある意味で本当の入院生活の開始ですね。

 座学はいくつかのものに分かれまして「依存症そのものの知識を学ぶもの」「依存症からの回復について学びワークを行うもの」「依存症の再発を防止するため学び具体的な方策を立てレポートを書くもの」「スタッフと患者対面で入院生活での係決めを行ったり、円滑な入院活動のための問題提起を行うミーティング」(これが係をやりたがらないひと本当に多いです猿でもできる内容なんですけどね)、そして座学プログラムのなかでも面白いものが「認知行動療法」というプログラムですね。依存症者はその思考が「お酒を良いもの」というフィルターにとらわれているため、その認知を「お酒は自分にとってどんな実害をもたらしたか」と頭に叩き込むという内容です。これは時間をかけなければ成立しないもので、最初の方はただの酒歴の振り返りとその発表によるグループワークになります。
 そして最後に自分のいちばん嫌いな「テーマミーティング」があります。ここでは自分の酒害について問わず、与えられたテーマを皆の前で患者ひとりずつ話していくものになります。ひとくちに患者といってもいろんなひとがいるので、同じテーマでも暗い人生を歩んだひとはそういう話に、性格のひねくれたひとはそういう話に、自分は性格が暗いので暗い話をしていましたが、発表のときに集まるひとの目が怖いです。おそらくこういったものの克服の意味も込めて、このテーマミーティングのプログラムもあるのでしょう。

 さて、この時期に肝臓のエコー検査や、心理士による心理テスト(結果はよくわからないものの、おそらく治療に問題ない程度の知能を測ったり、発達障害であるかを測ったり、精神疾患があるひとはそれも測るものだと推測されます)がありますが、とくに自分は問題なく検査をこなし、ここから再度レポートと看護師との面談がありまして行動範囲3の「学習期」に入ります。
 これにて行動範囲は「病院施設内」から「病院敷地内」へと広がります。それにともない院外で行うプログラムや行動というのも制限つきで可能になります。

 さて、ここで一旦話は変わります。このあたりで初の週末を迎えるのですが、週末というのはきちんとプログラムをこなし入院日数を経たひとだと許可制で訓練外泊や訓練外出が行われます。おかげで病棟内にはとてもひとが少なく、静かでやることがありません。読書好きでなかったりポータブルのDVDプレイヤー(持ち込み可)などの持ち込みがない限り要は娯楽のない休日みたいなものになります。院内に残るひとは売店だったりで買い込んだお菓子をむしゃむしゃ食べたり、ニュースでもいいからとテレビにかじりついたり、とかく暇です。洗濯機と乾燥機が(テレビカード制で)使えるため、この日にまとめて洗濯をするひとなんかもいますね。
 そんな感じで穏やかな日が好きなひとには静かな、せっかちだったりするひとには退屈でしかない土日が繰り広げられます。三食饗されるご飯しか楽しみがないというかたもいますね。ぼくは最初のほうの週末はひたすら読書ばかりしてました。

 さて、ここで「学習期」の話にもどりますが、「農耕(その名の通り畑を耕す)」や「レクリエーションスポーツ」など身体を使った集団行動を行うのですが、学習期の特徴はそこではありません、一応、学習期より上の期間はなくここからは各々の行動で行動範囲を4(二時間程度で戻ってこられる場所ならどこでも)にしたり、規定の日数を経て訓練外泊を行えるようにします。
 行動範囲を4にするためには当然、不正行為(喧嘩や許可外の喫煙)をしないことはもちろんですが「自助グループ」への積極的な参加やレポート提出が必要になります。
 当然これを読んでいる方には自助グループがなにかというのは分からないと思いますので、まずそれを説明しましょう。
 自助グループというのは、要は「同病のひとたちによる寄り合い」でアルコール依存症ならアルコール依存症なりの、ギャンブル依存症ならギャンブル依存症なりの集まりがありそこでミーティングや会合をおこないます。自己の体験発表の部分はまんま院内でのテーマミーティングと同じで、僕は大の苦手です。
 アルコール依存症の自助グループには「断酒会(入院治療中のひとには求められませんが、月額の会費制というシステムを採っています)」と「AA(「アルコホーリクス・アノニマス」の略であり、米国で最初に生まれたこの手の自助グループになります。会費はミーティング参加者の献金制)」があり、「AA」だと「ビッグ・ブッグ」と呼ばれるものの読み合せがあったり行動のステップを奨励されるなど、「断酒会」は断酒会で、会員間の結びつきがより強かったりして、各々特徴があります。この自助グループには院内でタクシーチケットが出たり、会合の有志から送迎が出たりして、好きな会場に行けるのですが、これを積極的に参加しない場合行動範囲は2に落ち、積極参加すれば行動範囲は4になるというシステムです。

 こうやって少しずつ期間を経て病院に慣れてくると今度は、患者間での喧嘩や諍いなどが発生するようになります。ホールのテレビの音量が大きいとキレてみたり、過剰な換気を行ってみて室内を寒くしたり(ぼくが参加した頃は冬です)する患者さんが出るなど、行動がおかしくなってきたりします。アルコール依存症という単体の病気でだけでなく、精神的な人間関係の病気を持っているひともこの共同生活で洗い出されてくるわけですね。さすがに口論程度でそうなることはありませんが、ガチで身体的な衝突のある喧嘩を行うと懲罰的に鍵のついた隔離部屋送りになったりします。

 閉鎖病棟から隔離病棟ですね。こっちのほうがエロゲっぽいとかホラー映画っぽいという向きもあるかも知れません。都合、自分も一度この隔離病棟に入ったことがありますが、ここはトイレ付きの個室になり、食事も個別に運ばれてきます。そもそもアルコール依存症だけではなく、その他精神疾患の入院患者が入院しており、なかでも隔離病棟では基本的に看護師の介助が必要な方々の入院場所になります。本当に笑い話にしてはいけませんのでご注意を。

 さて、ここまでで、具体的な入院生活のシステムが説明できたと思うので、ここからは次回からは解説というより自身の体験記めいた内容になります。

 改めて言いますが、酒は嗜む程度でほどほどに。ネタみたくストロングゼロを飲んでいるひと、これは量も控えめに、毎日とか飲まないようにしてくださいね。自分の知人でも一日10本のストロングゼロによる飲酒によって肝硬変で亡くなったかたもいます。度を越せば酒は百薬の長ではなく、ただのドラッグでありその身を傷つけるものになります。ほんとうに見直せるひとはここで飲酒習慣の見直しか、この記事をストゼロ呑みながら読んでいるような危ないひとはメンタル(アルコール治療専門のクリニックか病院)へ! きちんとした知識ある専門医があなたの飲酒行動の相談に乗ってくれますよ。

アルコール依存症病棟入院のこと その1

 前の日記で自分がアルコール依存症治療の入院をしていたというのはつらつら書いておりましたが、アルコール依存症ってのがまずなんぞやというところからスタートしたほうがいいと思うので、それについてまず書きますと……

 いつの間にやらお酒が最優先で他のこと完全にグダったり、酔った上での問題行動を起こすようになったり、まああとは肝臓を含む消化器で疾患になったりとかでこの辺ひっくるめて「問題飲酒」っていうやつにいたる感じですね。
 アルコール依存症の診断基準ってのには分かりやすい『ICD-10』ってやつがあるのですが、基本軸として、飲酒の統制行動が取れなくなるというか……つまり、飲む時間とか飲む量をほどほどにできなくなって、健康診断で医師から「お前さん内臓の数値に問題があるから控えなさいよ」と言われても飲んじゃうっていうのが分かりやすい症状です。ぼくの場合は連続飲酒発作ってやつになったりしましたね。朝から晩までお酒が入っていて、それがひたすら連日になっちゃっているようなひとです。ご飯もほとんど摂らないとお酒だけストックして飲み続ける状態。
 さて、こっからアルコール依存症のわかり易い例なんですが、自分は一度アルコール依存治療のプログラムを受けに精神病院に入院する前、まず身体のほうが先に悲鳴あげちゃって内科のほうに三週間ほど入院したわけですね。栄養も足りてないわ、肝臓のほうもダメージを受けているのでケアしないとという感じで、劣悪だった食事状態も改善させたり肝臓というか胆汁のはたらきに効く「ウルソ(ウルソデオキシコール酸)」とかを処方してもらって、当然入院なんですから、その間は禁酒ですわね。それで消化器のはたらき、肝臓だと「γ-GTP(酒飲みのひとがよく気にするガンマって数値)」という、そんならんま1/2みたいな名前の検査値が落ち着いたら退院するという感じで、晴れて自分も内科の退院を迎えるわけですが、当然お医者さんからは「今後はお酒は控えてくださいね」って言われてまして、しかし病院から出たその足であたくし病院の目の前に座してます大手チェーンのスーパーで、その日の分のストロング系チューハイを8本ほど買ってから、家までのバスにゆられて日常へと帰るんですね。
 はい、全然お酒控えられてませんやんというやつです。
 そんで、せっかく内臓の値としては健康的になったというのに、即堕ち2コマでアヘ顔グダグダ飲酒生活に戻ります。

 こういうことをやっちゃうのが分かりやすいアルコール依存症のひとです。
 先述の診断基準には「耐性の形成」とか「離脱症状(よくいう禁断症状です)および離脱症状軽減のための飲酒」とかもあるんですが、こういうの総合して「お酒やめなきゃいけないのにやめられない」ってのがアルコール依存症ですね。

 実際に診断や治療を受けているひとってのがどの程度だったかは失念しましたが、まあ、飲酒交通事故なんてのを起こしているひとはまず間違いなくこのお病気の典型患者になるんじゃないかと思います。実際、アルコール依存症病棟行きましたが、免許取消処分のひとは相当数いました。まあ、免許無しで生活できるほうがアル中のひととしては幸せなほうだと思います。いわゆる治療を受けているひとは氷山の一角で、治療を受けないまま肝疾患で死ぬひととかも数え切れないほどいるでしょう。

 さて、閑話休題、自分の場合は内科の入院中にアルコール依存症の病院を勧められて紹介状を書かれていたんですが、せっかく主治医さんが書いたしということで、紹介状懐に精神病院の門を叩きました。
「ボク依存症やねん、入院させてくれや」という流れで入院というのはできなくて、「面談」というのがまず行われます。医師のひとだったり心理士のひとだったりが担当すると思うのですが、ぼくの場合の担当は心理士さんでしたね。心理士さん美人でしたよ。
 そこで、有名なアルコール依存症のスクリーニングテストやら問診を受けて、該当すれば晴れて入院が決まるわけですね。

 とはいって、病床都合もあるのか決定すれば即入院スペシャルというわけにはいかなくて、自分の場合はいついつという日時を決めてからの入院となりました。それが、2019年秋の話です。
 2018年から19年あたりの自分の酔ったときの創作物に関する感想ツイートや、音楽を聞いているときの情緒の乱高下なんかもかなりやばいところにいってましたので、この辺で、「このひとおかしいな」と感じたネッ友の方々もそこそこいると思います。
 入院が決まったらそこまでお酒をやめられればいいのですが(実際そのくらいできるひとも結構います)、自分はてんで無理で入院前日の晩まで飲酒していました。

 そうして入院のための荷物を準備しタクシーに乗り込んで、いざ入院です。
 さて、依存症治療はいわゆる閉鎖病棟で行われます。「閉鎖病棟」というとなんぞえっちだったりホラーだったりと色んな創作物でなんやらこう暗い感じに描かれますが、その実としては病棟の常時施錠とそこからの出入りに関して看護師などによる同伴や許可が必要というところくらいであって、字面ほどおどろおどろしくないです。共有スペースでは家庭用ではあまり見ないくらいのサイズをした大きなテレビも設えられてスポーツにドラマにバラエティにと見れますし、病棟の本棚には漫画や小説(多分患者さん寄贈が多いかと思われます)もそこそこありますし、自販機も備えられてます。ちくしょう、「金色のガッシュ」途中まで寄贈して放置したやつ誰だよ、結構な量あるから完結すると思って読み始めたら、いいところで途切れてたよ。

 さて再び閑話休題、病院にもよるかもしれませんが、アルコール治療入院は基本的に治療上の必要性がない限りにおいて大部屋です。ぼくの入ってたところだと四人部屋での入院となります。一応、病院はアルコール依存だけでなく、前回のエントリでも話したと思いますが、GD(ギャンブル依存)やらその他の依存症も同時に治療し、入院時の四人部屋の振り分けはアルコールがふたり、あとはギャンブルと処方薬依存のひとという感じでした。また、出身地も九州圏外の人が半数を占めていたりとなかなかバリエーション豊か。助っ人外国人をアメリカ・オランダ・キューバ・ベネズエラで集めるような豊かさです。
 さて、そんな方々が病院で具体的に何をするのかというと……。
 ひとつは「座学」、依存症というものがなんであるか、まず知識として知るところからスタートです。先述した依存症の診断基準の話とかもこのへんで学びます。
 ここらへんからすでに厄介で、自分の足でやってきて希望して入院したひとじゃなくて家族からの希望で(というと響きがいいけれど)入院することになったひととかもいるわけで、ここでアルコール依存症に対する否認が入っていたりで、はいそうですかと見つめ合って(依存症と)素直にお勉強できなかったり、あとそういうタイプのひとは場合によって知識を得るにあたって依存症の自覚ができたりして、きちんと治療プラグラムに向かっていくことになるんですが、問題は、家族からの希望で入院が決まったひとでもアルコール性なのかアルツハイマー性なのか脳に認知症が入ってたりすると、もう同じ座学の椅子に座るのも難しいです。
 自分がどうして入院してるのかというところまでよく分かってなかったり、そもそも家族に騙されて病院に入れられたんだよという具合のひとがいたり、その手合いのひとだと笑っちゃまずいのですが、この病院を温泉施設と信じてやってきただけで自分はそもそもこういう入院なんて受ける気はないんだとかいって、それだけじゃなく特に夜間は毎日、先程言ったテレビがある共有スペースを徘徊徘徊し続けたり(まあ映ってるドラマとかはテレビ前の特等席で見てたりするんですけどね)、毎日、自分で荷物をまとめて「実は今日出ていくんです」というのをこれまた毎日続けたりします。とはいって、「家族の許可はある」「治療はしないとまずい」「本人にも治療を断る権利はある」とかの揺れ動きで、一応、このあたりの決定権は結局のところ本人含めた家族と担当医師にあり、もうそもそも治療できる状態にないしどうにもならないかなとなると、さすがに晴れて退院が決まったりします。
 そんなひとの行き先をぼくは知りませんが、元気にしていたらいいなと思う次第です。

 というわけで、まず座学を受けられるレベルになるというのがスタートラインです。ほんとに競馬のゲートにすら入ってるかどうかみたいなところです。そういったところから、まともに依存症治療プログラムの入院生活がスタートします。
 ちなみにいうと、病棟や治療プログラムのお写真はありません。一応、カメラとか通信機器(ケータイやPCなどですね)の持ち込みは依存症治療に差し障りがあるので御タブーです。それでもある程度、入院に関する情報をそこそこきちんと書けるのは、個人的にオフラインの文章入力機器であるポメラを持ち込んでいたからだったりします。ありがとう、事務の王様KING JIM。とはいって、この辺はまだ、メモった情報の話が出てきている部分でもないのですが……。

「座学」の内容やそれ以外についてももうちょっと書き連ねたかったのですが、まあそこそこの尺はエントリとして書けているのと、全部一気に書くのも長尺になりすぎるだろうというところで、一旦この辺で次回に……と。
 次回からはもうちょっと具体的なプログラム内容や入院生活の話をしたいと思います。

 アルコール病棟の入院生活について手っ取り早く知りたいかたは、先日食道がんで逝去され、ロリコン作家としても有名でありアルコール依存症に関する書籍で多数の賞を受賞されました吾妻ひでお先生の二作『失踪日記』『失踪日記2 アルコール病棟』がおもろしゅうてやがて学べるかつ、まあ実際ここで描かれる内容に似た生活なのでおすすめです。特に後者のほうの外泊訓練とかのくだりの生々しさだったり、集まる人間の濃さの面白さだったり笑っちゃうところも多いのでぜひぜひ一度手に取られてください。

  主治医あたりと喧嘩しちゃう人間、色んな依存症病院に複数回入院する人間、実際出てきちゃうぞ~!

失踪日記【電子限定特典付き】

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失踪日記2 アル中病棟【電子限定特典付き】

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 最後に、最近、sora tob sakanaの音楽が気に入ったりしたのですが、もう夏にラストツアーとからしくて、アル中ひどくなって色々な優先順位ひっくり返り、新しい音楽ディグる気なくなってきたのを浦島太郎のように思ったり悲しく感じたりしております。

 あとさらに最後に、今後もこの手のエントリで口酸っぱくして言っていくかと思いますが、毎日ストロング系チューハイ5本も6本も飲むような生活してるひとは、片足か両足アル中沼に浸かっているかと思うので、実際、飲む量とか度数だけが依存症になる理由ではなかったりするんですが、そういう生活しているひと、おいしくないけどストロング毎日飲んじゃってるひとは、あれ単なる体の良い薬物摂取なんで、やめられるうちにやめといたほうがいいです。

 自分の言えた言葉じゃないですが……お酒はたしなむ程度でほどほどに。

アルコール依存症病棟で深夜眠れなかったときのこと

 この文章は小説でもないし、フリーハンドだからたぶん取り留めがない。精神病院依存症治療病棟の深夜三時、腰が痛くて眠れないからと、病室ではなく小さな明かりのつくホールでつらつらとポメラをいじりながら書いているものだ。病室で書けば良いだろうという向きもあるが、四人収容の大部屋で個人用に点く明かりは結構に明るすぎる。明るすぎるということは、同室のひとに迷惑がかかるわけで、ぼくはそういうのが嫌だ。
 さて、「夜間帯の病院」というものをイメージしたとき、入院エアプのひとはなにを想像するだろう。
「気の狂いそうな静寂」とか「恐くてとても冷たい空間」とか、そういったものを想像するだろうか?
 結論からいうとそのどちらもない。
 共同生活もすれば、院内では常に空調を一定に保つ必要がある。医療機器だって回す必要があるんだから、静寂なんてのはほど遠い。
 現在自分がいるのは精神病棟だが、総合病院で入院していた頃はそれこそうるさかった。病棟によりけりかもしれないが、深夜帯の総合病院はまあうるさいものだ、生命維持のぴこーんぴこーんやらが大体鳴っているし、身体の病で集まると、同じ病室の患者さんがいびきをかく比率なんてそこいらの共同生活より高い。ときおりと言わずちょいちょい重病者が死ぬし、時には誰かのすすり泣きが聞こえる。
 精神病院、わけても依存症病棟の夜はまだ良い感じ程度の静けさで、あといい感じの空調が効いて過ごしやすい。鳴る音もトイレの音か、夜食にカップ麺を食べるひとの音くらい。運が悪ければ同病のひとのいびきにあたるかもだが、ギャンブル依存症の入院患者なんてのはそこいらの健康体より健康体で、下手したら相当に理知的(賭けできちんと儲けようとするタイプもいるし)で、先ほど言ったとおりいびきに出会う確率は低く、されとてそれほど静かすぎるほどではない。深夜四時にポメラをいじっているバカもいる。あと、またうるささ方面についての話だが、やや気の狂った一般入院のひとも、夜間は眠剤を飲んだりしておねむだ。昼間みたいにガンガン壁叩いたり奇声を上げることもない。ましてやそんなどたばたについてもそう昼間多く繰り広げられるわけではないのだが。
さて先述の「気の狂いそうな静寂って」なんだろうかと思いを馳せる。暇つぶしなのだ、許してくれ。そんでまあ答えが出るのは速い。閑静な住宅街に建つ一軒家の夜間帯がいい。もちろん同居する家族ががいない、という前提であるが。
 さて、話は飛んでまたアルコール病棟の話に戻る。
 言葉にして面白いのは入院患者だろうと思うけれども、たぶん、一般生活で出会うひとのほうが浅慮だったり、優しくなかったりするし、あとぼくの前職である音楽スタジオのお客さんなんかのほうがよほど気が狂っとる。アルコール病棟の入院患者さんはグラデーションある程度あるが、往々にして結構優しい。ちょっと変なひともいるがたいていは優しいものなのだ。この手の依存症患者に共通していえるのは、「生きづらさ」があることだ、全員が全員というわけではないが、少なからず「酒を飲まなければどうにも立ちゆかなかった日々」というのを持っているひとが多い。そうして残念だと思っているが、ぼくはたぶんその手合だ。たぶん、アル中患者のなかでも特に強いっぽくて、運転での免停やら免取り食らったこともなく(これはアル中患者だとすごく多い、一方でぼくはゴールド免許だ)、奔放な恋愛遍歴とかをしたこともなければ、酒の席での殴り合いに奇行やブラックアウト(意識を失う)などもない、酒席は嫌いだし家でひとりで飲んで、ほどほどに眠くなったら眠る暮らしをしていたら、いつの間にかアル中になっていた。酒に関する問題も体調を崩すとか、友達との約束を体調で反故にするとかで、まあ場違いなときに酒臭さえしてなかったら、そこそこの一般人より静かなひとのほうだと思う。胸張って言える(胸を張るな)。
 そんなぼくからひとつだけ言えることがひとつある、毎日程度お酒を飲む程度の素養があるひとは、ストロングのチューハイに関しちゃさっさと手を引け。あれは嗜むタイプの楽しみ方がしづらいので、ていのいい薬物だと思う。もう一回言うけどストロングのチューハイはよしとけ、「酔えればいい」でいきつくタイプの酒で、昔のアル中のイメージのカップ酒とか、取っ手のついたでけえポリ容器(量をリッターで計るやつ)のアレと、飲み方の実においちゃそう大差がない。
 酔えればいいで飲む酒は、甘かろうがなんかのフレーバーがしようが、まあ正直なところまずい。アルコール依存症という診断を受けたことがないひと、なんとなくその気があると思うひとはたしなめる程度の度数と飲み方にさっさと戻った方がいい。週の飲酒頻度は多くて4、眠くなるまでの飲酒はしてはいけない。アルコール度数は6%くらいまででリッターほど飲んではならない、まあ、たまあにだけ潰れるくらい飲んでもいい、けどそのたまには週一回とかそういう頻度で起こしちゃだけだ。
 さて、やはりこの文章はフリーハンドなので話がまた飛ぶ。
 ルゥシイさん及び白日朝日の動向について勘の良いかたはお気づきのことだろうけれど、このところ入院入院などとかしましかったのは、八割方アルコール依存症にまつわる入院である。令和二年五月の退院で二回に分けて計五ヶ月、自分の足と連絡依存症病棟には入院したが、まあ明るく振る舞ってもつらいときはつらい。
 ひと嫌いで、酒席嫌いで、ひとを害さずまったりとアル中になるのはなんか悔しい気がする。酒で記憶飛ばして乱闘騒ぎのひとつでもしておけばよかった。
 そもそも根本からしてぼくはお酒は好きじゃないのだ。でもアル中になるのは意外とそのところ関係ないのでそれが本気でやっかいだ。
 もうすぐ退院なので、退院後に優しい声をかけてくれる方がいたらうれしいな(自分勝手なもんだけど)。ああ令和、五月八日、眠れない日の二時間強での文章ぺらぺらは結構進むのに、小説がこれまたうまく書いたりできない。依存症治療で酒が抜けてもうまく小説が書き上げられないので、ぼくの小説の不調とアルコールに具体的な関連性はないらしくて残念。たぶん、せいぜいが百合っとした小説にやたらと世代のずれたプロ野球に関する喩えが頻発するとかだ。
 一応、入院生活中も小説のプロットはがっつり書いたりしていた。ざっと数万字は書いたはずだが、結局Twitterでふぁぼ乞食しても本編書き上がり見込み薄くてどうにもこうにも申し訳ない。ああ、なんかアルコール病棟についての話をしたいのに小説に関する愚痴のほうが出てしまう。なんかムカついてきた。もうすぐアルコール病棟の夜が明ける。
 そろそろ患者がホールに起きてきやがった。愚痴(になってんのか分からんかわからんこのつれづれも)ももう終わりだアディオス。

映画『ジョーカー』感想

 さて「ジョーカーは俺だ」って言い出す観客は厄介だが、こんくらいハマる受け手ほど楽しめる映画なのは間違いないし、俺はといえば「ジョーカーは俺だ」勢のひとりである。
 この作品を観た翌日に、「俺はジョーカーだ……」と職場や教室の隅でぶつぶつ言っているひとがどれだけいただろう。ヒット作ではあったし、アカデミー賞にも刺さったので結構な人数にのぼったんじゃないだろうか。とかく、その種の感情移入を呼ぶタイプの作品であったし、ひとりの人物を描くサスペンスドラマとしても優れていたと思う。

 バットマンシリーズでも非常に人気の高いヴィランである「ジョーカー」にスポットライトを当てて制作された映画。と言うと、悪役視点で描かれつつもアメコミアクションに仕上がる印象を持つかもしれないが、実際にはサイコサスペンスと人間ドラマみたいな内容に仕上がっている。
 自分といえば映画のバットマンシリーズは『ダークナイト』大好き程度で、前後のノーラン監督作品を視てあとは虫食いだし、原作のコミックシリーズはほぼほぼ読んでいないという事前知識なものの、この『ジョーカー』は作品全体のまとう雰囲気が非常に張り詰めており、それだけで一気に観れてしまう支配力があった。
 「派手なアクション作品」でもなく「謎が謎を呼ぶ正統派ミステリー」でもなく、当然ながら「夢のあふれるファンタジー」でも「SF的なフィクション」でもない。それでも、ひとりの人物に焦点を絞ったサスペンスドラマで約二時間の上映時間を素晴らしく仕上げた制作陣に感謝という感じである。
 人間の狂気を描く作品というと、本当にぶっ飛んでいるというか常人に理解の及ばぬ超人的な狂人的描きかたをされるか、ひとには誰しもそういう狂気に陥る側面があるみたいな描きかたをされるようなものだと思うが、そういうスペクトラムのなかでもこの作品はかなり後者寄りの見せ方がなされており、観ていても主人公であるアーサーに対してかなり強く感情移入させられてしまう。
 有り得る誰か「アーサー」と、そのアイコン的な側面である黒いカリスマ「ジョーカー」が、多重人格的というよりはかなり地続きにされているのも面白い。

 ただ、この作品、いわゆる精神異常者でもあり妄想癖や幻覚見ちゃう「信用できない語り手」を主人公にしてあるため、どこまでが作品内の事実だったかどうかは微妙に判別がつかない。
 確実に事実であろうピースだけを集めると、主人公アーサーは「精神疾患持ち」「虐待された過去を持ち」「カウンセラーにかかっている」「コメディアン志望」「母親と貧しく実家暮らし」「作中で無職になる」くらいになる。
「アーサーはジョーカーである」「アーサーはトーマス・ウェインと血縁にある」「アーサーが五名以上に及ぶ殺人を犯した」というのが事実であったかさえかなりあやしいラインになったりするけれども、あくまでもアーサーあるいは誰かの「ジョーカーとしての目覚め」が骨子なので、それさえあれば、作中のほとんどの事実自体は割とどうでもよくなるといえるかもしれない。

 さてこの作品の魅力はなにかというと、やっぱり人物描写や主演のホアキン・フェニックスの鬼気迫る演技になるだろう。とかく、「アーサー」と「ジョーカー」というキャラクターに素晴らしく存在感や説得力があって、劇中約二時間、そこを魅せ通せたのがすごい。
 作中を貫く「次の瞬間なにが起こるか」というヒリつき張り詰めた雰囲気も、ミステリー的というよりはこの人物描写あってのことだろう。

 上映後の評判を軽く目にした感じだと、「傑作」と評したひとと「期待はずれ」と切ったひとで極端に分かれたイメージだったが、観てみると納得の好みとか趣味で評価分かれるだろっぷりの作品だった。とはいえ、見ていられないような悪趣味さはなく、撮影や演出とかそういったところの不出来さがある映画では全くないため、あらすじにある「戦慄のサスペンスエンターテイメント」というのが見たいひとなら割と素直に楽しめるはずだと思う。一家で楽しむとかデートムービーではないかなあ、という感じ。せっかく応援上映がブームなので、上映中ぶつぶつ呟いたり、不随意的に笑いの発作をしたりしながら応援上映してもいいんじゃないだろうか?
 とにかく、視聴後すぐにもう一回観たくなる質の作品なので、劇場の映像音響で観るのも良いけれど、ひとりひっそり盤なり配信で観るという楽しみ方が個人的にはおすすめかもしれない。

 ヒット作は充分ヒット作とはいえ、「ぼっちで陰キャ中二病なボクやらキミのため」かもしれない傑作映画であったと思う。

 皆さん、お休み。そして最後に……「これが人生」。