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アルコール依存症病棟入院のこと その1

 前の日記で自分がアルコール依存症治療の入院をしていたというのはつらつら書いておりましたが、アルコール依存症ってのがまずなんぞやというところからスタートしたほうがいいと思うので、それについてまず書きますと……

 いつの間にやらお酒が最優先で他のこと完全にグダったり、酔った上での問題行動を起こすようになったり、まああとは肝臓を含む消化器で疾患になったりとかでこの辺ひっくるめて「問題飲酒」っていうやつにいたる感じですね。
 アルコール依存症の診断基準ってのには分かりやすい『ICD-10』ってやつがあるのですが、基本軸として、飲酒の統制行動が取れなくなるというか……つまり、飲む時間とか飲む量をほどほどにできなくなって、健康診断で医師から「お前さん内臓の数値に問題があるから控えなさいよ」と言われても飲んじゃうっていうのが分かりやすい症状です。ぼくの場合は連続飲酒発作ってやつになったりしましたね。朝から晩までお酒が入っていて、それがひたすら連日になっちゃっているようなひとです。ご飯もほとんど摂らないとお酒だけストックして飲み続ける状態。
 さて、こっからアルコール依存症のわかり易い例なんですが、自分は一度アルコール依存治療のプログラムを受けに精神病院に入院する前、まず身体のほうが先に悲鳴あげちゃって内科のほうに三週間ほど入院したわけですね。栄養も足りてないわ、肝臓のほうもダメージを受けているのでケアしないとという感じで、劣悪だった食事状態も改善させたり肝臓というか胆汁のはたらきに効く「ウルソ(ウルソデオキシコール酸)」とかを処方してもらって、当然入院なんですから、その間は禁酒ですわね。それで消化器のはたらき、肝臓だと「γ-GTP(酒飲みのひとがよく気にするガンマって数値)」という、そんならんま1/2みたいな名前の検査値が落ち着いたら退院するという感じで、晴れて自分も内科の退院を迎えるわけですが、当然お医者さんからは「今後はお酒は控えてくださいね」って言われてまして、しかし病院から出たその足であたくし病院の目の前に座してます大手チェーンのスーパーで、その日の分のストロング系チューハイを8本ほど買ってから、家までのバスにゆられて日常へと帰るんですね。
 はい、全然お酒控えられてませんやんというやつです。
 そんで、せっかく内臓の値としては健康的になったというのに、即堕ち2コマでアヘ顔グダグダ飲酒生活に戻ります。

 こういうことをやっちゃうのが分かりやすいアルコール依存症のひとです。
 先述の診断基準には「耐性の形成」とか「離脱症状(よくいう禁断症状です)および離脱症状軽減のための飲酒」とかもあるんですが、こういうの総合して「お酒やめなきゃいけないのにやめられない」ってのがアルコール依存症ですね。

 実際に診断や治療を受けているひとってのがどの程度だったかは失念しましたが、まあ、飲酒交通事故なんてのを起こしているひとはまず間違いなくこのお病気の典型患者になるんじゃないかと思います。実際、アルコール依存症病棟行きましたが、免許取消処分のひとは相当数いました。まあ、免許無しで生活できるほうがアル中のひととしては幸せなほうだと思います。いわゆる治療を受けているひとは氷山の一角で、治療を受けないまま肝疾患で死ぬひととかも数え切れないほどいるでしょう。

 さて、閑話休題、自分の場合は内科の入院中にアルコール依存症の病院を勧められて紹介状を書かれていたんですが、せっかく主治医さんが書いたしということで、紹介状懐に精神病院の門を叩きました。
「ボク依存症やねん、入院させてくれや」という流れで入院というのはできなくて、「面談」というのがまず行われます。医師のひとだったり心理士のひとだったりが担当すると思うのですが、ぼくの場合の担当は心理士さんでしたね。心理士さん美人でしたよ。
 そこで、有名なアルコール依存症のスクリーニングテストやら問診を受けて、該当すれば晴れて入院が決まるわけですね。

 とはいって、病床都合もあるのか決定すれば即入院スペシャルというわけにはいかなくて、自分の場合はいついつという日時を決めてからの入院となりました。それが、2019年秋の話です。
 2018年から19年あたりの自分の酔ったときの創作物に関する感想ツイートや、音楽を聞いているときの情緒の乱高下なんかもかなりやばいところにいってましたので、この辺で、「このひとおかしいな」と感じたネッ友の方々もそこそこいると思います。
 入院が決まったらそこまでお酒をやめられればいいのですが(実際そのくらいできるひとも結構います)、自分はてんで無理で入院前日の晩まで飲酒していました。

 そうして入院のための荷物を準備しタクシーに乗り込んで、いざ入院です。
 さて、依存症治療はいわゆる閉鎖病棟で行われます。「閉鎖病棟」というとなんぞえっちだったりホラーだったりと色んな創作物でなんやらこう暗い感じに描かれますが、その実としては病棟の常時施錠とそこからの出入りに関して看護師などによる同伴や許可が必要というところくらいであって、字面ほどおどろおどろしくないです。共有スペースでは家庭用ではあまり見ないくらいのサイズをした大きなテレビも設えられてスポーツにドラマにバラエティにと見れますし、病棟の本棚には漫画や小説(多分患者さん寄贈が多いかと思われます)もそこそこありますし、自販機も備えられてます。ちくしょう、「金色のガッシュ」途中まで寄贈して放置したやつ誰だよ、結構な量あるから完結すると思って読み始めたら、いいところで途切れてたよ。

 さて再び閑話休題、病院にもよるかもしれませんが、アルコール治療入院は基本的に治療上の必要性がない限りにおいて大部屋です。ぼくの入ってたところだと四人部屋での入院となります。一応、病院はアルコール依存だけでなく、前回のエントリでも話したと思いますが、GD(ギャンブル依存)やらその他の依存症も同時に治療し、入院時の四人部屋の振り分けはアルコールがふたり、あとはギャンブルと処方薬依存のひとという感じでした。また、出身地も九州圏外の人が半数を占めていたりとなかなかバリエーション豊か。助っ人外国人をアメリカ・オランダ・キューバ・ベネズエラで集めるような豊かさです。
 さて、そんな方々が病院で具体的に何をするのかというと……。
 ひとつは「座学」、依存症というものがなんであるか、まず知識として知るところからスタートです。先述した依存症の診断基準の話とかもこのへんで学びます。
 ここらへんからすでに厄介で、自分の足でやってきて希望して入院したひとじゃなくて家族からの希望で(というと響きがいいけれど)入院することになったひととかもいるわけで、ここでアルコール依存症に対する否認が入っていたりで、はいそうですかと見つめ合って(依存症と)素直にお勉強できなかったり、あとそういうタイプのひとは場合によって知識を得るにあたって依存症の自覚ができたりして、きちんと治療プラグラムに向かっていくことになるんですが、問題は、家族からの希望で入院が決まったひとでもアルコール性なのかアルツハイマー性なのか脳に認知症が入ってたりすると、もう同じ座学の椅子に座るのも難しいです。
 自分がどうして入院してるのかというところまでよく分かってなかったり、そもそも家族に騙されて病院に入れられたんだよという具合のひとがいたり、その手合いのひとだと笑っちゃまずいのですが、この病院を温泉施設と信じてやってきただけで自分はそもそもこういう入院なんて受ける気はないんだとかいって、それだけじゃなく特に夜間は毎日、先程言ったテレビがある共有スペースを徘徊徘徊し続けたり(まあ映ってるドラマとかはテレビ前の特等席で見てたりするんですけどね)、毎日、自分で荷物をまとめて「実は今日出ていくんです」というのをこれまた毎日続けたりします。とはいって、「家族の許可はある」「治療はしないとまずい」「本人にも治療を断る権利はある」とかの揺れ動きで、一応、このあたりの決定権は結局のところ本人含めた家族と担当医師にあり、もうそもそも治療できる状態にないしどうにもならないかなとなると、さすがに晴れて退院が決まったりします。
 そんなひとの行き先をぼくは知りませんが、元気にしていたらいいなと思う次第です。

 というわけで、まず座学を受けられるレベルになるというのがスタートラインです。ほんとに競馬のゲートにすら入ってるかどうかみたいなところです。そういったところから、まともに依存症治療プログラムの入院生活がスタートします。
 ちなみにいうと、病棟や治療プログラムのお写真はありません。一応、カメラとか通信機器(ケータイやPCなどですね)の持ち込みは依存症治療に差し障りがあるので御タブーです。それでもある程度、入院に関する情報をそこそこきちんと書けるのは、個人的にオフラインの文章入力機器であるポメラを持ち込んでいたからだったりします。ありがとう、事務の王様KING JIM。とはいって、この辺はまだ、メモった情報の話が出てきている部分でもないのですが……。

「座学」の内容やそれ以外についてももうちょっと書き連ねたかったのですが、まあそこそこの尺はエントリとして書けているのと、全部一気に書くのも長尺になりすぎるだろうというところで、一旦この辺で次回に……と。
 次回からはもうちょっと具体的なプログラム内容や入院生活の話をしたいと思います。

 アルコール病棟の入院生活について手っ取り早く知りたいかたは、先日食道がんで逝去され、ロリコン作家としても有名でありアルコール依存症に関する書籍で多数の賞を受賞されました吾妻ひでお先生の二作『失踪日記』『失踪日記2 アルコール病棟』がおもろしゅうてやがて学べるかつ、まあ実際ここで描かれる内容に似た生活なのでおすすめです。特に後者のほうの外泊訓練とかのくだりの生々しさだったり、集まる人間の濃さの面白さだったり笑っちゃうところも多いのでぜひぜひ一度手に取られてください。

  主治医あたりと喧嘩しちゃう人間、色んな依存症病院に複数回入院する人間、実際出てきちゃうぞ~!

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 最後に、最近、sora tob sakanaの音楽が気に入ったりしたのですが、もう夏にラストツアーとからしくて、アル中ひどくなって色々な優先順位ひっくり返り、新しい音楽ディグる気なくなってきたのを浦島太郎のように思ったり悲しく感じたりしております。

 あとさらに最後に、今後もこの手のエントリで口酸っぱくして言っていくかと思いますが、毎日ストロング系チューハイ5本も6本も飲むような生活してるひとは、片足か両足アル中沼に浸かっているかと思うので、実際、飲む量とか度数だけが依存症になる理由ではなかったりするんですが、そういう生活しているひと、おいしくないけどストロング毎日飲んじゃってるひとは、あれ単なる体の良い薬物摂取なんで、やめられるうちにやめといたほうがいいです。

 自分の言えた言葉じゃないですが……お酒はたしなむ程度でほどほどに。