白日朝日のえーもぺーじ

ブログタイトルほどエモエモしくはありません

アルコール依存症病棟入院のこと その2

 さて、前回はアルコール病棟入院の導入部ですね。
 今回は入院のシステムとプログラムのお話になります。

 前回書き忘れていましたが、入院の際は採血や心電図など軽い健康チェックが行われます。それが終わると病室への案内の前に、各種書類の捺印とかサインとかその他いろんな説明ののち、持ち込み荷物のチェックが行われます。ハサミとか刃物とか火気は当然持ち込み禁止ですね。鼻毛用ハサミとかカミソリの日常生活品もナースステーション預かりになり、使用の際は許可が必要です。なぜか爪切りは許可降りました。
 基本的には着替えとか病棟で必要になるスリッパ、そういったものが主な持ち込み品になるんですが……紐靴だと紐預かりとかズボンに紐が通っているものならそれも、ズボンのベルトやらバッグの肩掛けも預かりになります。これは4日後返却になるんですが、そのへんについては後述するシステムの関わりがあります。まあ安定していない入院初期とかだと紐類も自殺に使われちゃったりしかねないっていうことなんでしょうね。うっかりするとここでズボンがズルズルになります。(一応、ズボンのひもに関しては持ち込みお断りとかもサイトに書いてないんですけれど)自分の場合はぱつぱつのデニムとゴムの寝間着だけなので問題なし。紐類全般預かりなので、電気シェーバーの充電器とかも預かりの対象ですね。電気シェーバー本体はそのまま許可下りました。前回述べたケータイなど外部への通信機器もここで預かりになります。(というか持って来ちゃだめなんですよ)

 荷物チェックが終わると、いよいよ入院する病室案内ですね。ここはリセマラなし(ゴネるか他の患者さんとトラブればあるのかな)のガチャです。一応、ヤバいひとと同室さんになったらどんよりムードの入院生活(都合2回入院した剛の者ですが、一度目はガチャ大当たり、二度目は微妙かなという感じ)できっちりとしたひとと同室になれば穏やかな入院生活です。さておき、ここで担当する主治医とかナースも決まりまして、しばらくしたらナースのひとも挨拶に来ます。付き添いのひとといっしょに入院したひとは、このへんで同室のひとやら看護師さんへの挨拶やら色々世間話とかします。
 そういう時間も終わると、入院時に自主的に行わないといけないことの説明とか入ります。がこの辺までだらだら色々長かったんで割愛。

 さて、うちの病院で依存症治療で入院するにあたっては「行動責任範囲」というのが設けられています。これが1~4になるほど、入院中の行動の自由が利くというものです。
 まず入院して4日は「安静期」といって行動責任範囲は1。病棟から出られませんし、基本、部屋のベッドで各々依存症のテキストでも読んでいてねという期間。まあアルコールのひとなら解毒が必要なひともいるでしょうし、プログラムにも一切参加はありませんが、もらった座学用のファイル(買わされます)の宿題をこなしたり、患者個人の依存歴やらを反省する期間になります。自分がタバコ吸わないから分からないけれども、確かこの期間は当院の喫煙スペースに赴くこともできず、完全禁煙です。
 っていうかそれくらいできなくて依存物への反省もあったもんじゃないだろうですしね。
 アルコールのひとはこの期間毎日離脱(禁断)症状チェックと、少なくとも必要日数は離脱症状防止薬の「セルシン」が処方されます。自分の場合は、これ処方されても初日は離脱症状で結構派手な悪夢というか幻覚見ます。そういうのも抑える薬ではあるんですがね。幻覚の詳細については面白い話ですが、「快」の話ではないのでこの詳細も割愛。(聞きたければコメ欄行きですね)

 安静期はこれ守るひとあまりいないですが、ホールで行われる食事とかトイレ以外は自分のベッドにいることが義務付けられます。一応、病棟の本棚には依存症やAC(アダルト・チルドレン)などなどまつわるテキストも置いてあり、病院から渡されたテキストをさっくり読み終えてしまった向きにもたくさん読書が可能です。ま、依存症関連書籍関係なしに所蔵してある小説とか漫画読んでても良いんですけどね、色々在庫ありますし。ちなみに図書の持ち込みは禁じていないので、各々の棚に好きな漫画持ち込んで詰めてそれを読んでいてもよし。
 まああくまで自分の話だと、もらったテキストさっくり読んで、ファイルの宿題(飲酒歴を反省するレポートを書いたり、座学のちょっとした準備がある)をこなしたら、座学用のファイル全部先に目を通して、興味のある関連書籍類もがっつりあたるって感じですね。真面目さんタイプです。不真面目さんは依存歴振り返りの宿題しかこなしません。宿題は担当看護師との面談によるチェックが入り、依存歴反省のレポートは、同じプログラムの患者さんの前で発表します。
 というそれまでの流れを行って、ここから行動範囲2の「準備期」に入ります。
 ここでは先述の紐類などの返却や、行動範囲が病棟から病院内になり、売店とかにも看護師の付き添いなしで行けるようになります。身体を使うとか屋外作業をする以外のプログラム(要は座学)にもここから参加です。ある意味で本当の入院生活の開始ですね。

 座学はいくつかのものに分かれまして「依存症そのものの知識を学ぶもの」「依存症からの回復について学びワークを行うもの」「依存症の再発を防止するため学び具体的な方策を立てレポートを書くもの」「スタッフと患者対面で入院生活での係決めを行ったり、円滑な入院活動のための問題提起を行うミーティング」(これが係をやりたがらないひと本当に多いです猿でもできる内容なんですけどね)、そして座学プログラムのなかでも面白いものが「認知行動療法」というプログラムですね。依存症者はその思考が「お酒を良いもの」というフィルターにとらわれているため、その認知を「お酒は自分にとってどんな実害をもたらしたか」と頭に叩き込むという内容です。これは時間をかけなければ成立しないもので、最初の方はただの酒歴の振り返りとその発表によるグループワークになります。
 そして最後に自分のいちばん嫌いな「テーマミーティング」があります。ここでは自分の酒害について問わず、与えられたテーマを皆の前で患者ひとりずつ話していくものになります。ひとくちに患者といってもいろんなひとがいるので、同じテーマでも暗い人生を歩んだひとはそういう話に、性格のひねくれたひとはそういう話に、自分は性格が暗いので暗い話をしていましたが、発表のときに集まるひとの目が怖いです。おそらくこういったものの克服の意味も込めて、このテーマミーティングのプログラムもあるのでしょう。

 さて、この時期に肝臓のエコー検査や、心理士による心理テスト(結果はよくわからないものの、おそらく治療に問題ない程度の知能を測ったり、発達障害であるかを測ったり、精神疾患があるひとはそれも測るものだと推測されます)がありますが、とくに自分は問題なく検査をこなし、ここから再度レポートと看護師との面談がありまして行動範囲3の「学習期」に入ります。
 これにて行動範囲は「病院施設内」から「病院敷地内」へと広がります。それにともない院外で行うプログラムや行動というのも制限つきで可能になります。

 さて、ここで一旦話は変わります。このあたりで初の週末を迎えるのですが、週末というのはきちんとプログラムをこなし入院日数を経たひとだと許可制で訓練外泊や訓練外出が行われます。おかげで病棟内にはとてもひとが少なく、静かでやることがありません。読書好きでなかったりポータブルのDVDプレイヤー(持ち込み可)などの持ち込みがない限り要は娯楽のない休日みたいなものになります。院内に残るひとは売店だったりで買い込んだお菓子をむしゃむしゃ食べたり、ニュースでもいいからとテレビにかじりついたり、とかく暇です。洗濯機と乾燥機が(テレビカード制で)使えるため、この日にまとめて洗濯をするひとなんかもいますね。
 そんな感じで穏やかな日が好きなひとには静かな、せっかちだったりするひとには退屈でしかない土日が繰り広げられます。三食饗されるご飯しか楽しみがないというかたもいますね。ぼくは最初のほうの週末はひたすら読書ばかりしてました。

 さて、ここで「学習期」の話にもどりますが、「農耕(その名の通り畑を耕す)」や「レクリエーションスポーツ」など身体を使った集団行動を行うのですが、学習期の特徴はそこではありません、一応、学習期より上の期間はなくここからは各々の行動で行動範囲を4(二時間程度で戻ってこられる場所ならどこでも)にしたり、規定の日数を経て訓練外泊を行えるようにします。
 行動範囲を4にするためには当然、不正行為(喧嘩や許可外の喫煙)をしないことはもちろんですが「自助グループ」への積極的な参加やレポート提出が必要になります。
 当然これを読んでいる方には自助グループがなにかというのは分からないと思いますので、まずそれを説明しましょう。
 自助グループというのは、要は「同病のひとたちによる寄り合い」でアルコール依存症ならアルコール依存症なりの、ギャンブル依存症ならギャンブル依存症なりの集まりがありそこでミーティングや会合をおこないます。自己の体験発表の部分はまんま院内でのテーマミーティングと同じで、僕は大の苦手です。
 アルコール依存症の自助グループには「断酒会(入院治療中のひとには求められませんが、月額の会費制というシステムを採っています)」と「AA(「アルコホーリクス・アノニマス」の略であり、米国で最初に生まれたこの手の自助グループになります。会費はミーティング参加者の献金制)」があり、「AA」だと「ビッグ・ブッグ」と呼ばれるものの読み合せがあったり行動のステップを奨励されるなど、「断酒会」は断酒会で、会員間の結びつきがより強かったりして、各々特徴があります。この自助グループには院内でタクシーチケットが出たり、会合の有志から送迎が出たりして、好きな会場に行けるのですが、これを積極的に参加しない場合行動範囲は2に落ち、積極参加すれば行動範囲は4になるというシステムです。

 こうやって少しずつ期間を経て病院に慣れてくると今度は、患者間での喧嘩や諍いなどが発生するようになります。ホールのテレビの音量が大きいとキレてみたり、過剰な換気を行ってみて室内を寒くしたり(ぼくが参加した頃は冬です)する患者さんが出るなど、行動がおかしくなってきたりします。アルコール依存症という単体の病気でだけでなく、精神的な人間関係の病気を持っているひともこの共同生活で洗い出されてくるわけですね。さすがに口論程度でそうなることはありませんが、ガチで身体的な衝突のある喧嘩を行うと懲罰的に鍵のついた隔離部屋送りになったりします。

 閉鎖病棟から隔離病棟ですね。こっちのほうがエロゲっぽいとかホラー映画っぽいという向きもあるかも知れません。都合、自分も一度この隔離病棟に入ったことがありますが、ここはトイレ付きの個室になり、食事も個別に運ばれてきます。そもそもアルコール依存症だけではなく、その他精神疾患の入院患者が入院しており、なかでも隔離病棟では基本的に看護師の介助が必要な方々の入院場所になります。本当に笑い話にしてはいけませんのでご注意を。

 さて、ここまでで、具体的な入院生活のシステムが説明できたと思うので、ここからは次回からは解説というより自身の体験記めいた内容になります。

 改めて言いますが、酒は嗜む程度でほどほどに。ネタみたくストロングゼロを飲んでいるひと、これは量も控えめに、毎日とか飲まないようにしてくださいね。自分の知人でも一日10本のストロングゼロによる飲酒によって肝硬変で亡くなったかたもいます。度を越せば酒は百薬の長ではなく、ただのドラッグでありその身を傷つけるものになります。ほんとうに見直せるひとはここで飲酒習慣の見直しか、この記事をストゼロ呑みながら読んでいるような危ないひとはメンタル(アルコール治療専門のクリニックか病院)へ! きちんとした知識ある専門医があなたの飲酒行動の相談に乗ってくれますよ。