白日朝日のえーもぺーじ

ブログタイトルほどエモエモしくはありません

ルゥシイさんの2023年上半期

・前書き

 おい、半年過ぎるのあっという間やんけ!! びっくりしたわ。

 とはいっても昨年ほど空虚な2023年上半期ではなく、就職活動をしながら必要になりそうなスキルの習得などの勉強を行ったり、しばらくエタらせていた趣味の小説創作活動の再開など、それなりに活動的な上半期を過ごしたかと思います。Twitterでヤナギハ( @yanagihatei )さんと行っている連作兄妹Post漫画(漫画:ヤナギハ)の原作などもいい感じのペースで続けさせていただいております。

 たぶん、映画のほうも上半期だけで10本くらい鑑賞したかと思います。このあたりについてものちほど触れさせていただきます。

 

・面白かったアニメ作品 in 上半期

 大体、自分のアニメ視聴に関してはクールアニメの視聴と、そこに並行して自分が未視聴だった作品を紹介していただくなり探すなり勝手にぶつかるなりして視聴しておりますが、この項目ではその辺についてお話しさせていただきます。

 ひとまず、今年の上半期のアニメ、めっちゃアニメ面白くなかったっすか? コミックについてアンテナが高くない自分でも名前を知るような話題の原作であったり、まったく知らない原作からでも素晴らしいアニメーション作品として制作されており、自分としては非常に楽しめる今年上半期であったかと思います。

 このあたりについて、年末やるものと違ってランキング形式ではなく個々でお気に入りのものの話をさせていただきます。

―冬アニメ(大体25作くらい観てた)

 

・お兄ちゃんはおしまい!

 驚くほどの美麗なアニメーションを堪能させてくれた『無職転生』制作をしたスタジオバインド作品でもあり、ドタバタコメディ作品とは思えない強烈な映像表現が味わえました。

 物語自体は、女子高生くらいの年齢ながら飛び級で大学に行ったマッドサイエンティストな妹である「みはり」と、彼女と比較された日々がコンプレックスとなりやがて引きこもりとなったお兄ちゃんの「まひろ」を中心に進んでいくのですが、まひろがみはりの作った性転換薬を盛られたことによって、とてもかわいい女子中学生くらいの姿となるところから物語は始まります。

 それからというもの、まひろは入浴ひとつにも時間がかかったり生理に苦しんだりもする女の子としての生活スタイルを、最初はただ受け入れるだけでしたが、少しずつ女の子としての自分の姿に前向きになっておしゃれを楽しんだり、メイクを教わったりと楽しく女の子チュートリアルしていく日々を送ります。

 まひろにとって特に大きな変化のきっかけは、女子生活のなかで得た友人のもみじやあさひにみよと中学校に通い、第二の中学生ライフを過ごすことでしょうが、元来持っていた明るさやコミュニケーションもそれほど苦としない性格が、学校生活では友人といることで活かされて、まひろ自身にとっても周りの友人たちにとっても、それにみはりとっても前向きな好影響を及ぼしていきます。

 ひきこもり生活の間に失われていた兄妹間の交流というのも性転換してからは復活して、元々お兄ちゃんっ子であったみはりにとっても、まひろが学校で作ってきたクッキーを贈られたり、みはりが熱を出した日にはお兄ちゃんなりの努力で家事や看病をしてくれたりと、みはりにとってはちょっとしたご褒美のように(ここ実質加害者が得をするという構造に笑えるのですが)お兄ちゃんなまひろを味わえます。

 そんなみはりとまひろのちょっぴり感動も味わえるような兄妹生活、JC友人関係同士の癒し系ドタバタライフ、色んな角度から楽しめる本作ですが、とにかくこの作品「まひろ」が男子側にとっての女子の魅力を知っているからこその、ときに自覚的でときに無自覚的な女の子としての魅力を見せるからこそ面白い。

 特に学校に通うようになってからのまひろは男心を持つ(掴める)女の子としてすごくかわいく輝いていき、色んなおしゃれををしたり、表情豊かに笑顔を見せたりときに無自覚にクラスメイトの男子を誘惑してしまったり、ある種の媚びがとても薄いのにもう一方では中学生女子としての生々しい立体性を備えたかわいさを見せてくれ、このあたりが本当に他のアニメーション作品ではなかなか味わえない魅力に仕上がってます。

 また、先述の通りこの作品は映像表現や演出に非常に秀でており、特にエンディングアニメーションは「超作画」とも呼ばれ、その動画が大バズりしました。

youtu.be 猫を抱くまひろの描写であったり、めっちゃ美味しそうに伸びるピザのチーズの様子であったり、そしてダンスするようなシーンでもそこにいるみんながびっくりするほど動く動く。この無茶苦茶な映像美は本編でもかなり多く味わえ、ふだんの登場人物たちの活き活きとした動きだけに限らず、ボウルの中の卵をかき混ぜるだけの作中の調理シーンひとつにも目が行くような、そんな映像の魅力もまた他の作品では味わえません。

 個人的には兄妹が仲良く過ごす日常作品が好きということもあり、この作品の特に兄妹関係を特に魅力的に感じていましたが、まあ観るひとにとってほんとうに多様な角度からこの作品は魅力を味わえます。序盤数話の段階でも楽しいですが、まひろが学校に通うようになる中盤から特にこの作品とまひろのかわいさが定位されてくる感じがあるので、これからこの作品を楽しむひとにはぜひ、中盤からのまひろとみはりだけに限らず広がっていく関係性なんかも楽しんでほしい。そんな魅力いっぱいの「KAWAII」作品でした。

 

・もういっぽん!

 2023年冬アニメクールとしてはダークホースと呼ばれていました。「柔道に全力な女子たちの熱い青春ストーリー」というキャッチコピーめいたものに特別ピンと来ず、自分がPVを観たときにも「柔道に元々興味はないから内容にそれほど興味はないけれど、アニメーションとしてはしっかりしているから楽しめそう」くらいのものでしたが、もう1話を観た段階でその評価が一変してしまいました。

 確かに自分が期待をしていたとおりに映像はしっかりしているのですが、物語のスタートラインがまず面白い。主人公である青葉中柔道部の部員園田未知はこの大会で一本を決めたい。「一本勝ちをしてスパッと柔道人生を終わらせる」という気持ちを同じく中学柔道で苦楽をともにした早苗に告げて、中学時代最後の試合に臨むのですが、相手はとっても強い氷浦永遠ちゃん。

 自分が持てる色んな武器を持って全力で永遠ちゃんに挑むのですが、なかなか勝ち筋を見つけることができず、しかし対戦中の怪我にも笑いながら戦っていけるほど、未知はこの対戦を楽しんでしまいます。結果、永遠ちゃんの絞め技での勝利。しかも、未知の絞め落とされた表情が撮られてネットに晒されるというおまけ付き。

 彼女は中学で練習も大会もきつい柔道をやめたいやめたいと口にするのですが……言葉の裏にある「柔道を続けて一本を取りたい」という気持ちがガンガンに透けて映ります。そして、未知と早苗が進学したのは女子柔道部員がもういない青葉西高校。だけど、剣道部員で未知の幼なじみである南雲に強引に誘われながら武道場に行くとそこには中学時代最後の対戦相手の永遠ちゃんが、女子柔道部員になるべくそこにいて――。

 という段階で、これからの未知の柔道に懸ける熱い青春が期待できるじゃないですか。そして、その期待感通りの面白さは毎話右肩あがりで更新されていきます。2話では早苗との中学時代の気持ちいい対戦を思い出しながら柔道への熱を取り戻していき早苗と永遠ちゃんとともに再び柔道部員になったり、地方大会が始まると永遠ちゃんと中学時代に因縁を持つ霞ヶ丘の天音先輩たちに出会い、そして大会でこちらの涙が出てくるような熱い対戦を見せてくれるような。

 未知たちの運命を変えてくてるような他校の柔道部員との出会い、それから柔道としての駆け引きの面白さと、負けられないという全力の気持ちに導かれた迫力満点の柔道の対戦。これを毎話毎話楽しませてくれます。もちろん、自分が期待した通りのアニメーションの良さは、緩急が見事に活かされた迫力の柔道描写に全力で活かされていきます。

 とてもストレートにお話もアニメーションのどちらも両輪が上手く回って、見ているこちら側は、その最高のエンターテイメントに期待とともに巻き込まれていく、すごくよくできた青春柔道群青アニメーションに仕上がってました。こんなん面白くないわけないやんという話です。ひとつだけある欠点は、すごく面白いしアニメ1期として上手くまとめ上げたけれど、その続きが絶対にあるので続編が観たくて仕方ないこと。それだけですね。ハチャメチャに楽しませてもらい毎話更新される度に画面にかぶりついた、すんごく面白い柔道アニメ作品でした。

 

―春アニメ(大体20作くらい観てた)

 

・江戸前エルフ

 現代の東京、月島で江戸時代から住民たちに信仰され(愛され)てきた高耳神社、その祭神「高耳毘売命(たかみみひめのみこと)」として徳川家康公に召喚され祀られて、未だに街の人々の前に姿を表しながら神事を執り行われる不老不死のエルフ、エルダ様の、とても神様とは思えないだらけたオタクライフと、彼女の巫女としてときに厳しく接しながらときに友だちのように遊び相手のようにもなる小日向小糸たちの日常的な姿を、ほんわかとした雰囲気と笑いどころやネタいっぱいのコメディ表現で描いていく、とても素敵なこの作品。

 主人公であるエルダ様と小糸をはじめとして、小糸の妹であるかわいらしくてハイスペックな小柚子たちの高耳神社組、それに小糸の親友であるコマちゃんをはじめとするエルダ様を愛する月島の人々、それからエルダ様と同じように豊臣秀吉公から召喚された子どもっぽいヨルデ様や同じく巫女として彼女を支える小日向向日葵ちゃんたちなどなど、この物語に登場するのは明るく楽しく優しいキャラクターたちばかり。

 そんな彼女たちと関わる日々もやはり楽しく癒やされる雰囲気で描かれていきます。そうしてエピソードのほとんどは楽しく笑えて癒されるような内容ばかりですが、ときに不老不死であるエルフという存在としてのエルダ様と、小糸の埋めがたい違った時間の過ごし方を描く6話のようなエピソードもありますが、そんなお話もただ切なく表現するだけでなく、前向きな日々に向かっていくように描かれるのがとても印象的です。

 そしてこういうお話だからこそ最終話のお話も切なさを煽るようなものでなく、「いつもの」彼女たちを描いた、おみくじ程度でころころ変わるような表情豊かな日常の姿。もしかしたらそんな日々こそエルダ様の望んだ誤差程度の変わらない日々なのかも知れません。

 笑えて楽しく癒やされて泣けて、けれどもそこに負の感情が混じらない。日々の楽しみに喜びにほんの少しの切なさだけ混じる、毎日がすこし大切になるような、月島の人達に愛された高耳様のような、愛され体質な素敵な日常アニメでした。

 

・アイドルマスター シンデレラガールズ U149

 アイドルマスターのアニメシリーズに於ける2023年時点での最新作。扱うアイドルたちはみんな身長149cm以内のつまりロリ、やわらかく表現すると恐らく小中学生くらいまでの少女たちがメインのお話になります。ストーリーラインとしては全話繋がっていますが、9話まではおおよそ担当キャラクターにスポットライトを当てたオムニバス的なアニメの仕上がりになります。

 アイドルマスターといえば、プロデューサーと担当アイドルという図式で知られていると思いますが(筆者も詳しくはないです、まあソーシャルゲームの内容からそうなのでしょう)、今作も例に漏れず、主人公であるプロデューサーがこの物語とアイドルを支えてゆきます。

 プロデューサーの所属するアイドルプロダクションでは、会長肝いりの企画として少女ばかりのメンバーが集められた第3芸能課というプロジェクトが動き出し、そこにはプロデューサー経験はないけれど熱い気持ちとアイドルに対する夢をしっかりと持った熱血型で等身大のプロデューサーが配属されます。

 そんな彼が第3芸能課のアイドルといっしょに仕事をしていきながら、トラブルにぶつかり合い、互いに成長していきながら理想とするアイドル像へと彼女たちを導いていくアニメになります。オムニバス形式なのでその回を担当するアイドルによってお話やテーマなどの振れ幅はありますが、おおよそ全話ストーリーとしても面白いエピソードで構成され、アイドルの女の子たちも魅力たっぷりに表現されてゆきます。

 特に面白かったのは3話を担当した赤城みりあ回、4話を担当した櫻井桃華回、それからイントロダクションでもある1話と11話を担当した橘ありす回でしょうか、なかでも個人的な評価としてこの11話は今年観たアニメーションの1話として最高峰のエピソードだと思っています。

 この11話に至るまで1話から丁寧にすこしずつ橘ありすというキャラクター像と、どういう部分にコンプレックスを抱えているかなどを見せていきながら、11話の橘ありすのアイドルとしてどう続けていくかの未来を両親と語るはずの三者面談を通して、一気に彼女が抱えていた両親とのコミュニケーション不全を洗い出しつつ、同時にまた橘ありすという少女の等身大な少女性、そしてプロデューサーとの対話を通して、彼女にとってのアイドル像、それから同時にプロデューサーにとってのアイドル像がしっかりと形を取っていくのが素晴らしく、このエピソードにおける物語の白眉としてはありすが、ここまで悩んできた「おとなってなに?」という悩み(それこそがありすが理想とするアイドル像について頭を悩ましてきた部分)の本心を力強くぶつけ、そしてその本心こそがプロデューサーである彼にとって「彼女(たち)にとっての(自分にとっての)大人の姿(アイドルの姿)はなんだ」という抱えていた悩みにぶち当たって、涙するプロデューサー、その弱さを見せるおとなの姿こそ、ありすの抱いていた願望によって隠されたままだった両親の涙する姿と重なり、彼女が記憶を辿りながら思い出していく、そのアニメーション表現の凄まじさたるや、1作の劇場アニメを観ているようで素晴らしいです。

 橘ありすという女の子がひとつの大きな答えを見つけ出すための物語に、凄まじいほどの映像演出と音楽演出を見せたこの11話は個人的に伝説になるレベルのアニメーションだったと思います。挿入歌として橘ありすの切なく歌う、彼女の心の迷いを描いた『in fact』と、悩みが晴れて少し明るく歌われるアンサーソングのようなエンディングテーマの『to you for me』をその歌詞といっしょに噛み締めてほしいと思います。

 本当に自分がこれまで観てきた「今敏」や「細田守」「新海誠」など有名アニメーション作家の作品と肩を並べてもおかしくないと感じています。

 まあそんなこんなで11話を大絶賛していますが、おおよそのエピソードはちょっぴり癒やされてしっかり明るくさせられるアイドルの卵たちのお仕事アニメであります。

 映像表現として抜群の完成度を高く誇る、アイドルを目指す少女たちのかわいいという一面だけでなくあらゆる姿を楽しませてもらう、そんな素敵なアニメーションでした。

 

 クールアニメの感想についてはできるだけ大好きな一作一作に言葉を尽くしたいということもありまして、たとえば春アニメに関してはほかに『推しの子』や『スキップとローファー』『山田くんとLv999の恋をする』、『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』などなどお気に入りのアニメ作品もあったのですが、ここでの感想を省かせてもらいました。もしかすると年末に書くであろう今年の好きな作品ランキング記事のほうに描いていくかもしれませんが、ひとまず今回の記事ではここまでになります。(決して面倒くさくなって感想を省いたわけじゃないんだ信じてくれ、いや嘘だ、けっこうただ面倒くさいだけで感想を省いたんだ……。ただ、一作一作に言葉を尽くしたいという方は本心なので、そちらは信じてくださいませ。)

 

―過去作品のテレビシリーズ視聴から特に素晴らしかったものを

 

・たまゆら

 最高の一作。沢渡楓というひとりの少女の、父の喪失からの成長を経ての再生と巣立ち、その全てがシリーズ全てで紡ぎあげられた素晴らしい作品。

 ぽって(沢渡楓)が歩き出すため手にした父のカメラと竹原という土地での出会いで始まった、彼女の高校生活、そして描かれる青春。父から受け継いだローライ35Sがその息を引き取るまで、彼女はたくさんの出会いを思い出をフィルムに収め、写真にしてきました。そこには笑顔も泣き顔も成功も失敗もあらゆるものが残されていて、大事なものはそのすべてがぽってにとって必要で、出会いや思いの全てがたからものであることです。

 彼女のこれまでの写真はすべて、父の喪失もまとめて素敵な宝物につなげてきた沢渡楓というひとりの少女が、新しい日々に向かっていくための、学校から贈られるものとは違う、思い出のアルバムのなかに卒業写真として仕舞われます。

 旅立ちを寂しさでなく笑顔で迎えられる、そんな彼女の成長を映したこの作品は素晴らしかったです。始まりを飾るOVAのオープニングテーマであるである坂本真綾の『やさしさに包まれたなら』を始めとして、毎話のように登場しては癒やされるメインテーマやあらゆる劇伴に作品の肝心な箇所をしっかりと演出してくれる数々の挿入歌なども素晴らしく、劇場版最終章の最後を飾るエンディングテーマに同じく坂本真綾がカバーする『卒業写真』を持ってきた心憎さはベタながら最高に利いていました。

 竹原を始めとして尾道など瀬戸内海の実在するあらゆる景色を最高に美しく切り取った背景美術も素晴らしかった。

 ぽってとともに歩み成長していきあらゆる思い出を彼女と共に刻んでいくかおちゃんやのりえちゃん、麻音ちゃんのぽって部員、ぽってと偶然出会い写真部として入部し、ぽってとともに成長しながら終始かわいい存在であり続けたかなえ先輩、それからぽってのお母さんにお婆ちゃん、そして志保美さんやさよみお姉ちゃんたち、そんなあらゆるぽっての出会いが彼女を支えてくれたことも素晴らしくて、特にさよみお姉ちゃんやぽってのお母さんは主役のぽってと並び、声優さんの熱演に支えられ素晴らしかったです。

 作品を支えるあらゆる全てに恵まれた傑作でした。

 

・ARIA

 感無量のひとことで言い表せない、素敵で作られた作品でした。

 アクアという星、ネオ・ヴェネツィアという場所に愛された、水無灯里という少女を中心に据えた奇跡の物語。「灯里がプリマになる夢を叶える」というお話だけでなく、灯里が出会った藍華ちゃんやアリスちゃんたち全て、そして間違いなくその中心にいるでっかい偉大でとっても身近なアリシアさん、その継承と別れ。

 一子相伝のアリアカンパニーだからこその、プリマとしての実力も認めていてコミュニケーション能力も溢れた灯里にこそカンパニーを託せると信じているアリシアさんに残る、灯里との日々を終わらせたくないという苦悩が物語の裏にしっかりと映って、隠されていた本心を灯里に明かす姿にはただただ涙が止まりませんでした。

 アリスちゃんの飛び級プリマ昇格というびっくりするような素晴らしいお話にも、ゴンドラさんお別れ回というとても切ないながら前向きなエピソードにも、そこには感動が溢れていて素晴らしかったです。

 アリシアさんとの別れを孕んでいるからこそ、期待と同時に不安も宿るこのこの作品に対する、そのふたつの感情を大きく超えて、万感の最終回に結びつけていく構成が素晴らしいとしか言いようがありません。

 音楽による演出が巧みにこの作品を支え続けて、活き活きとしたキャラクターの表情描写や美しいウンディーネ姿の描き方、それから当然外せないネオ・ヴェネツィアという世界の美しい情景描写など、完璧に物語を支え続けてくれました。

 アクアという星、そこに暮らす人々、藍華ちゃんやアリスちゃんなど、語り尽くせないほどの出会いの奇跡に愛された少女の、でっかい成長物語だけでなく人間讃歌まで描ききった素晴らしい作品でした。

 

・フルーツバスケットリメイク版

 感動をありがとうとしか言えない。つらい日々もかなしい日々も素敵な日々に変わることがあると教えてくれた、包容力とやさしさにあふれた作品でした。

 旧作アニメシリーズも原作も大好きな自分にとって、よくぞこの丁寧さで再アニメ化してくれたと感じました。

 透くんをはじめとして草摩の十二支たちを含めたあらゆるキャストが素晴らしく、また同時に最高の演技を見せてくれたことにも感謝しかなく、なかでも透くんを演じた石見舞菜香さんによってひだまりのようなあたたかさと同時に心が切り裂かれるような切実さを与えられたこと、紅葉を演じてくれた潘めぐみさんの熱演によってキャラクターとしてのマスコット的なかわいさや、かなしい過去をかなしいものとせずにうれしいものと受け取る彼の細やかな心情の動きを鮮やかに写しとってエピソードの感動を最高にまで運んでくれたことが嬉しくて仕方ありません。

 昨今のアニメとしては2クール2作に最終シリーズ1クールとあまりに長い作品で、それが全部必要で笑いも感動も、喜怒哀楽が全て詰まった人生のような作品を幸せなエピローグにまで描ききってくれたことが喜ばしくて仕方ない。最高の原作を活かしきった文句なしの傑作アニメでした。

 

・月がきれい

 最高の青春純愛アニメーションでした。主人公の小太郎や茜たちに限らず、あまりにも生々しい質感の会話や心情描写、それを説明しすぎずに映像表現として描き出す巧みなアニメーションが素晴らしい。というかこの作品に溢れる生々しさをどう拾ってこれほどのアニメにできたのか分らなくて異能としか呼びようがありません。

 ふたりの恋愛のあらゆる風景やあらゆるやりとりが、ほんとうに一編の小説のように切り取られて、彼、彼女たちが気持ちを伝え合うシーンは全て目を惹きつけられてたまらない。観ているこちらが気持ちの動き全てを受け取ってしまう感覚は無二の作品でした。

 随所で用いられるLINEでの会話演出もよく利いていて、最終話で小太郎が「小説家になろう」的な場所を使って公開する小説も現代的なギミックだけれど、お話に完璧にハマっていて素晴らしかったです。ところどころで挟まれる名曲カバーの挿入歌など、全て気の利いた演出になっていて見事。最高にニヤニヤできる、完璧な一編の青春小説アニメでした。

 

・ラブライブ!

 一大ムーブともなり、その後10年以上続いていく人気シリーズのはじまりを飾るにふさわしい傑作。「アイドルアニメの型」をほぼ「ラブライブ!の型」にしてしまった功罪できちゃう作品でもあれど、本編の物語も穂乃果の始めた小さなスタートラインから始まって、メンバーとなるみんなを巻き込んでいきながら、学園全体へ続く大きな物語を『スクールアイドル』『ラブライブ』という大会の発明によって興味部深く繋げていき、『μ’s』というサーガをつくりあげていくのが素晴らしかったです。

 1期から丁寧に演出しながらA-RISEというスクールアイドルの対立軸を構成して、2期では彼女たちをきちんとぶつけて盛り上げていく構成も素晴らしい。

 終盤では3年組の卒業という定められていた別れをμ’sの終幕と繋ぎ合わせて、儚く輝く流れ星のような話として感動をいっぱいさせてくれたのも最高でした。

 そして、出てくるだけで面白く、だけどほんとうにアイドルを愛するマスコットかつ名言製造機の「矢澤にこ」をはじめとして、μ’sメンバーのみんなはとても魅力的で、だからこそ思い入れる気持ちというのが画面の向こうから届くのは素晴らしかったです

「Snow Halation」を始めとしてライブとして演じられる楽曲自体も他のラブライブ!シリーズより素晴らしかったように感じました。

 とにかく1期から拾い上げる話の演出が丁寧で最後まで力いっぱいに見せつけられる、「アイドルアニメとしての金字塔」というだけでなくアニメ作品としても傑作のひとつだと感じました。

 

・みなみけ

 卓越した掛け合いだけで見せるシチュエーションコントのような傑作アニメ。

全話使用される言葉のIQが高くて、原作者の頭の良さのようなものが透けて見えるし、そこが作品として南家三姉妹をはじめとして。マコちゃんや保坂など素晴らしいキャラクターたちを上手く回す、もうほんとよくできた日常アニメでありシットコム。

『らき☆すた』から人気作品の続いたこのジャンルのなかでも、コントとキャラクターという素材の面白さが全面に出た傑作は、この作品以降類似作品として超えてくるものも出てこなかったのではないでしょうか?

 

―映画作品

 

・ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

 自分は4DX3Dという鑑賞方法で観たのですが、まあとにかくUSJかというようなアトラクション。マリオたちのアクションシーンでは座席が揺れ、殴られたりすれば背もたれだけじゃなく足元から動き、キャラクターたちが水を浴びれば自分たちにも水がかかってくるし、暑い場所に来れば背中が熱くなり、3Dでの映像はまるで目の前で手が届くよう。本当にまるで遊園地の最新アトラクションのような演出で映画視聴が楽しめました。

 その上で、お話はこれまでの初期のマリオ前身作品からドンキーコングまで含めたマリオ関連シリーズを楽しんでいると、クスっと笑えるような小ネタがいっぱいで、しかも別にこの作品がマリオ初体験でも充分に楽しめるウェルメイドに作り上げられた、マリオというなんでも全力で勇気抜群の配管工を主人公とした痛快アクションアニメ映画としても楽しめます。

 スーパーマリオシリーズからマリオカートシリーズなどを上手くアクションシーンに折り込んで、終始ワクワクと興奮度が高い映像体験を楽しめます。

 4DX3Dという鑑賞方法では3000円弱で2時間半最高に楽しいエンタメアトラクションを堪能できる、制作者のマリオ愛に溢れながら文句なしのエンターテイメント作品でした。

 

・君たちはどう生きるか

一応こちらは別枠でアホみたいに長くて終始ネタバレしている長文考察感想記事がありますので、そちらのURLを貼っておきます。

halcyondaze.hatenablog.com

 

・BLUE GIANT

 最高のJazzムービーであり、ほとんど2時間弱の熱いジャズバンドライブでした。挟まれる主人公たち大と玉田と沢辺という三人の出会いが織りなす玉田と沢辺による成長のドラマも面白かったのですが、それがしっかりと映像としてハチャメチャに興奮度高く表現されるライブシーンがなによりも白眉。

 特に最初はドが付く初心者だったドラマーの玉田が大とふたりだけでライブしなくてはならない場面。そこでこれまでの努力が熱く結実されて表現される演奏シーンの熱量と音楽の迫力は素晴らしく。彼がこの物語の主役だったのではないかと思えるほどでした。

 映像表現と音楽ドラマに支えられた、視聴後熱に浮かされたような気持ちになる。本当に良いライブを見せられた気分になるジャズバンドライブムービーでした。

 これから、配信や盤によってこの作品を観るかたは自分が用意できるなかでできるだけ最高の音響が楽しめる環境で視聴してもらいたい、そんな作品です。

 

後書きに

 1クールアニメを視聴すると同時に、『たまゆら(OVAに始まりテレビシリーズ2シーズンと最終章となる劇場シリーズ4作品)』『ARIA(テレビシリーズ合計52話に、OVA4話、それから現在の最新作である2021年の劇場盤2作品)』『フルーツバスケット(テレビシリーズ3シーズン合計63話に劇場作品1作)』と大長編シリーズを多く観ていましたが、他にも結構な数アニメ作品を楽しんでいました。代表的な作品としてはここに書いていないもののかなりのお気に入りである、あたおかバイクネタコメディアニメの『ばくおん!!』なんかもありますが、その辺趣味的にまともっぽく見えるよう恣意的な編集を行っております。

 ともかく、個人的に人生を変えるようなお気に入りの仕方をした『たまゆら』の視聴体験が個人的に今年トップクラスになるんじゃないかという勢いで印象に残っています。人生で初めての聖地巡礼旅を予定しているそんな作品を好きになることができて素晴らしい時間でした。

 これからたぶん就職活動はなんらか前向きな形で結実すると思うのでそうなるとアニメの視聴作品は今までのようにバカみたいな数とアホみたいな速さで観ることはできないと思いますが、これまでのアニメとの出会いを噛み締めつつ、新たなアニメを楽しんでいくのだと思います。

 ルゥさんのオタ活は懲りずにまだ続いていきます。そんなインプットはきっとまた何らかの形でアウトプットされると思うので、楽しんで読んでくださる方はまたこいつはと思いながらでもお付き合いしてくれると幸いです。

 前記事である『君たちはどう生きるか』の感想記事同様、長めの記事になってすみません。反省を活かして自分の負担が減るように生きたいです。

 みなさんも最近の気象にめげたりせずに健康第一で下半期も楽しく過ごしていきましょう!

 

 ではな。