白日朝日のえーもぺーじ

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『ハミダシクリエイティブ』感想。

 このブログを更新するのは実に半年近くぶりになります。前にブログを更新してたときのお題は、依存症治療の入院からの退院のこともあって「アルコール依存症」でしたが、今回のエントリのネタはかなり自分らしく、エロゲ感想です。

 ちなみに、前回のエロゲ感想はぱれっとの『9-nine-』シリーズのもので、やはりそれから約半年ぶりくらいになりますね。期せずしてかなり大絶賛に近い感想を書きましたが今回はどうでしょう?

 というわけで今回感想を書くソフトは、まどそふとの『ハミダシクリエイティブ』という作品です。2020年9月25日発売と、けっこう、近々の作品になります。(といっても発売から二ヶ月近く経っているのか……)このメーカーの作品は『ワガママハイスペック』だけプレイ済みで、あの時は妹キャラである兎亜目的で始めて、意外とその幼馴染の後輩である未尋にハマったような記憶があります。多分、この作品リアルタイムではアニメ化もされたんじゃないかと思いますが、観ていないのでその辺はよく思い出せません。

 まあ、ネタバレというネタバレもないタイプのエロゲとは思いますが、感想にネタバレが気になるひとはこのエントリからペッとグーグル先生にでも飛んでください。

 

 さて、この作品は「ハミダシ」という言葉が表すようにちょっと、世間からはみ出したキャラクターたちがメインになり、学園モノというジャンルでありながら大体の登場ヒロインは不登校だったりします。また同時に「クリエイティブ」というところで、ヒロイン各々が「作家」だったり「声優」、いわゆる「絵師(プロの萌系イラストレーター)」、果ては「VTuber(ヴァーチャルユーチューバー)」をやっています。そんなヒロインたちと、突然の生徒会長退任とそれによる全校生徒のくじ引きから学園の生徒会長になった主人公たちが昇級単位とかの問題で生徒会で活動していき、各々の交流を深めていくというのがメインのストーリーになります。こう書いてみると、王道学園モノっぽいけれどもけっこうクセがある設定ですね。

 物語の序盤からはいわゆる学園モノ定番の仲間集めストーリーで、主人公は、やはりクセのある性格のヒロインたちをミッション的に生徒会に引き込むために、東奔西走します。はじめはくじ引きで選ばれた主人公本人も乗り気じゃなかったのですが、ヒロイン集めをしながら、徐々にヒロインたちと仲良くなるにつれて、生徒会活動というものにも前のめりになってゆきます。そうして、メンバーが集ってからの他校生徒会とのシンポジウムや、そこで「面白いものにする」と約束してしまった文化祭がストーリーの軸となります。

 ここからは、攻略したヒロイン順で感想を書いていきましょう。

 

・錦あすみ
 素直で優しい後輩ではありますが、同時に引っ込み思案なところがあり、本人の自己評価もかなり低い女の子になります。VTuberという本人の顔出し無しの世界では本人も楽しみながら自己表現をしており、いわゆる登録者数みたいなものもすごい娘ですね。

 デザイン上の魅力は、水色系で色素の薄い髪型と、守ってあげたくなるような小柄系かつボディラインのほうもかなりすっとん系なところですね。物語が進んでくると登場しますが、彼女の私服であるねこみみフード付きパーカーもとてもとてもかわいらしくてよいです。あざとかわいらしいです。

 そんな彼女はけっこうな男性恐怖症的なところがあり、そんななかでもすっと仲良くなれて生徒会参加も承諾させた主人公のことをけっこうな勢いで信頼します。そのよくわからない信用っぷりと持ち前の素直さが絡んで、主人公やヒロインたちからの評価は「天使」とあいなります。実際にいたら頭を撫でたくなる登場人物度に関してはこの作品最高で、作中でもよく頭を撫でられていますね。愛玩小動物系の後輩です。

 はてさて、元々主人公をとても信頼しちゃっている彼女ですが、恋仲のように主人公と惹かれ合うきっかけは、彼女のVtuber活動での配信トラブルですね。そこで真っ先に彼女の前に登場してから心の支えになった主人公とあすみの関係はどんどん深くなっていきます。両親が外国で活動しており、一人暮らしな彼女の部屋での逢瀬を繰り返すうちにどんどんお互いに離れがたい存在になってゆくという感じですね。

 ここからは物語説明というより個人的な感想なんですが、内気な小動物系ヒロインとしては、わりとテンプレな感じの女の子で、かわいいといえばかわいいのですが、デザイン以外でグッとひかれるフックみたいなものはなかったと思います。変であればいいというわけではないですが、キャラクター的に差別化ができていたかなというと、そう感じなかったですね。ただ、個人的に興味のほぼなかったVTuberという設定とストーリーの絡みは新鮮かつ物語的にも起伏づいて面白くなっていたと思います。「面白いことをやらなければならない文化祭」というものにも、彼女がそこに別場所でのVTuber出演と同時にステージで自分の歌を披露するという形で、そこへ向けて数々のトラブルを抱えながら、「不登校だった自分の変化」という自己表現に挑んだところもかなり意義深くて良かったんじゃないかなと。

 

常磐華乃(ときわ かの)
 作中では売れっ子絵師「ののか」として活動しており、いわゆるソシャゲのキャラデザで、プレイヤーたちのお金を置く単位で動かしている女の子になりますが、彼女も自身の家の生計を支えるくらいの絵師活動の忙しさや、過去に学園生活で抱えたトラウマのようなものを理由にやはり不登校となってしまいます。そんな彼女ですが、一応学校では主人公とクラスメイトであり、また、幼馴染というほどではないけれども過去に同じ学校に通っていた、比較的主人公と近しい存在だったりもします。

 キャラクターのデザインとしてはピンク髪でおっぱいのでかい女の子ですね。バカピンクではありませんが淫乱ピンクです。
 当方、こういったキャラデザが比較的苦手ということもあり、はじめはあまり興味のなかったヒロインでしたが、ストーリーが進むにつれて、頑固なところがありながらも筋の通った義理堅い性格や、ヲタ男子の女子版的なすぐ早口になっちゃうところのギャップもかわいくて、読み進めるにつれてこの作品終わってみるといちばん好きなヒロインになっていました。作品フルコンプしてから知ることではありましたが、担当声優が個人的に大好きな「秋野花」さんだったのもこのキャラクターを好きになる要因だっただろうと思います。あとになってから思えば、掛け合いが多い台詞での間みたいなものもすごく良かった。物語のラインはあすみのVTuber活動が絵師活動に置き換わったという感じで、そこまでこのふたりのヒロインはストーリーに大きな違いがありません。ただ、あすみが文化祭で披露したライブパフォーマンスとして「不登校について」割と真剣に話したことに対して、華乃はステージで行ったライブペイントのとき、不登校だった自分についても語るのですが、披露後主人公に対して、この辺は生徒会でそのパフォーマンスをやる上でのあとづけの建前みたいなもの、とあっけらかんと述べてしまうところも、茶目っ気があってよかったと思います。開始当初は仲違いの多かった主人公とヒロインではありますが、ストーリー終盤へ向かうにつれて背中を預け合う仲間っぽくなっていたのも好印象でした。

 

・和泉妃愛(いずみ ひより)
 かなり難読な名前のヒロインですが、バリバリに売れっ子声優「小泉妃愛」として活躍しつつ主人公を家でバリバリに甘やかす主人公のひとつ年下の実妹キャラでもあります。彼女のブラコン度合いは序盤からけっこうな勢いで表現されていますが、兄である主人公の方は、家族として妃愛と仲良く暮らしているではありますが「妹に萌えるとかw」を公言するタイプの人間であり、シスコンっぽいところはあまりありません。
 彼女が学園を不登校になっている理由というのは、華乃同様校外での活動が売れっ子で多忙を極めていることと、これは彼女のルートの物語が進むにつれ明かされていくのですが、「ごく近しく仲のよい他者以外への、かなり強度な人間不信」だったりします。幼い頃から役者や声優活動を行っていたこともあり、周りの大人を含めた他者への立ち居振る舞いというのは百点満点といってもよいくらい器用にこなすします。

 そんな彼女が冗談めかして言う「お兄のことは一生わたしが養っていくからね」という言葉も実際かなりの勢いで本気であり、開始当初はそれほど感じなかったものではありますが、ブラコンとしての彼女の主人公への依存度はすこぶる高く、彼女の行動理由の中心に「兄を喜ばせたい」というのが強く入っています。
 もっともそれは、幼くして両親を交通事故で失ったときの彼女のトラウマ的なところに端を発するところではあります。優秀な自分と比べてダメな兄のことを両親相手に馬鹿にし、そのことを両親に諭されるものの、納得いかずに苦言を発した翌日に、その両親は他界してしまい、ふたりに謝ることもできないまま、逆にダメだと思っていた兄からは「俺が守るから」とふたりでいることについて、心強い言葉をかけてもらい、そのことをきっかけに両親にも一度馬鹿にした兄にも謝れない強い悔恨や罪悪感のようなものを抱えたまま、成長してゆくこととなります。
 まあそうして物語のスタート地点、ソシャゲ狂いの非コミュな兄と売れっ子で家計も支える妹というように、過去の回想で彼女が馬鹿にした通りの構図は変わらないままではありますが、妃愛のブラコン感情は強く、ヒモっぽい兄に対して「やればできる子」と常に根拠があるのかないのかな後押しをし続けます。そんなお兄が生徒会活動に前向きになっていくのをいちばん好ましく思ったのも彼女でありましょう。

 彼女が声優活動を行っていくうえで、ひょんなことから「兄のことばかりを大好き大好き言う」SNSでの裏垢の存在が明らかになり、それによって炎上してしまったり、気落ちしている中でも事務所や支えてくれるファンたちのために出演した、ファンイベントで、ファンだったであろう人物に卵を投げつけられるなどの暴行事件が起き、彼女はどんどん疲弊してゆき、同時に、そんなときに真っ向から彼女を支えた主人公に対して兄妹ともどもとても共依存度高く恋仲へ進展してゆきます。
 外面は立派でも折れてしまいそうな彼女と、そこでできる限りそばにいて妃愛を喜ばせることをし続けてきた主人公、その関係はいずれ禁断っちゃ禁断の近親性愛関係になります。とはいえ、あまりお互い背徳的な感じに進んでいくのも、すでに両親を失っているというのがあるからかもしれませんね。

 さて、妃愛ルートでの文化祭の出し物での演目は「朗読劇」。しかも、作家である詩桜先輩と二人三脚で、彼女自身の過去を暗いところまで含めて描いた脚本であり、吐露のような内容とプロ声優としての実力が活かされて、この出し物は大盛況で幕を閉じます。主人公も彼女の今まで触れたことがない部分にも触れ合うこととなり愛慕の気持ちはより深くなります。
 彼女たちの関係が性愛までいたったことについて、周りが受け入れることはやはりあまりないとふたりは考え、その関係を大っぴらにしないことをふたりは選びますが、そんななかでのウェディングドレスの試着撮影というのは、切なくもいい物語の幕の綴じかただったと思います。

 まあ、当方自他ともに認める妹キャラ好きであり、そういう兼ね合いもあってどのルートよりも本意気でルートを読んだのではないかと思いますが、過去に出会った妹ヒロインのルートと比べてすごく突出してというものではないと前置きしつつ、すごくストーリーとキャラクタートータルでのこのルートの満足度はすごく高かったと思います。

 

・鎌倉詩桜(かまくら しお)
 主人公の一学年先輩で、彼が生徒会長業に就いてしまうきっかけともなった人物であり、その性格はかなりのわがままな自由人で自信家。本人自身も優秀というか有能ながらそれゆえ、主人公の前に生徒会長になったはいいものの、彼女の思うように動けない周りの人間を一切カットしてしまう冷酷ちゃ冷酷なところがあります。

 主人公と仲良くなっていく経緯は、前任生徒会長としての現生徒会への関わり合いの中で行われ、元々全く評価していなかった主人公のことを、生徒会というよりその外での交流によってその評価を一変させてゆき、ふたりでのプライベート旅行をしちゃうほど主人公とは仲良くなっていきます。

 黒髪ロングの長身で出るとこバッチリ出た体型で、自信家生徒会長らしいキャラデザのヒロインではありますが、当方出るとこ出た体型で死ぬ病という珍種の病を抱えておりまして、この詩桜というキャラクターについては容姿含めて、主人公に対するSがキツイところもあまり好きではありません。
 ルートが進むにつれて、彼女がなぜ主人公に必要以上に強く当たっていたのか、その理由や実際は主人公の生徒会長就任さえも仕組まれたものだったというのが解説され、けっこう物語全体をひっくり返す伏線明かしをするストーリーの彼女のルートではありますが、正直あまり気が乗らなくて、詩桜との恋仲も深まったあと、文化祭直前なぜか突然主人公が自転車での交通事故入院をはさんでしまうのも、その作劇上での必要性について理解しづらく、身体がまだ癒えきれないなかで性的行為に及んだ双方の感じもあまり良いものとして見れませんでした。

 ルートのなかでいうと、主人公と仲良くなるきっかけだった「みかんカフェの手伝い」周りとそれきっかけの愛媛旅行くらいでしか好ましいところがありませんでしたね。性的な互いの関係みたいなところもあまり好ましく思えず、トータルでいちばん苦手なルートになってしまいました。

 

・作品全体について
 まどソフトの作品として以前プレイした「ワガママハイスペック」よりもキャラクターデザインや、物語もキャラクターもそう尖った部分を感じないながらも、表情豊かなキャラクター描写はとても好印象でテキストもとても読みよく、システム周りに不満を感じることもなく、某批評空間での感想でもあったのですが「『令和』の王道」「『令和』のこういうのでいいんだよ」というような、学園モノ作品でエロゲをこれからはじめたいというような人物にとても勧めやすい作品になっていると思います。

 一応、ヒロインへの好感度も含めたルート評価として、いちばんが「華乃」、それとわずかなさで「妃愛」、その次に「あすみ」(悪感情はなかったんだけどね)、大きく離れて「詩桜」といった感じになりました。
 あと、推奨攻略順についてですが筆者のプレイ順序同様に「あすみ→華乃→妃愛→詩桜」で良かったんじゃないかと思います。コンプ後もやもやしやきもちになるのが嫌な場合、後半のふたりの順序を入れ替えれば良いかもしれません。

 とりあえず、個人的な満足度も高くサブヒロインも魅力的に動かされていたこともあり、メーカー次作というよりFDなんかが来たら思わず買っちゃうであろうくらいに気に入る作品になりました。未プレイの方にも素直におすすめです。

 

ハミダシクリエイティブ ボーカルアルバム

ハミダシクリエイティブ ボーカルアルバム

  • 発売日: 2020/09/25
  • メディア: CD