白日朝日のえーもぺーじ

ブログタイトルほどエモエモしくはありません

『天気の子』見ました。という体で語られる新海誠監督に対する愚痴のこと

 劇場で見なかった分、奮発してBD購入の40型ディスプレイ5.1chで観ました。
 あらかじめ言っておきますけれど、ぼくは新海誠氏の熱心なファンとかそういうのではないんですね。観た作品も限られている(『秒速5センチメートル』『君の名は。』あとエロゲメーカーminori時代のOPムービーとかです)し、にわかにもなんにもなれないんです。

 言っちゃあ悪いんですが、たぶん、このひとの作品って刺さってないのだと思います。キャラデザ一新して多分資金潤沢に仕掛けられるようになった『君の名は。』以降の青春ノリもそうですし、未視聴ですけれど『言の葉の庭』とかみたいなところ、というかそもそもBD持っているんですけれど、『秒速5センチメートル』もクソほど刺さってないんです。新海誠作品としての比較という点では、若干、秒速は分があるんですけれど、根っこのところが多分噛み合ってません。
 さっきも言ったんですけれど、刺さらないんです。
「じゃあなんで観るのよ?」っていえば、映像が綺麗だからですね。
 特にBD買ったその二作品はその理由で買うた感が顕著で、今ではそうでもないんですけれど、特に秒速の頃あたりの新海作品ってアレじゃないですか? これ今でも通じるか分からないんですけれど「新海光線」ってのがあって、同じ「映像が綺麗」でもジブリ作品の「よく動く」美麗さとか、京都アニメーションやufotable作品的な美麗さ、とはまたちょっと違って、たとえばひとつの光源とかその反射に対して紫とか緑だとか、実際に見えるものだとしてもそこを過剰表現したような光とか、あとこれも秒速で顕著なんですがブラーがかったホワッとした雰囲気光ですね。そういうのが好きで買ってたところがあります。

 新海光線というと、エロゲメーカーだと彼がお世話になったminonriって、実はそれほど多用したイメージないですね。それこそOPムービーだけに登場する印象が強いです。あ、いや、間違った。彼がメーカーから去ってからむしろ多用するようになったかもしれません。たぶん。あとはエロゲメーカーの老舗「Purple Software」あたりは新海作品流行って(第一段階的流行りというか秒速以後)から、少なくともムービーには光線使うようになるのがイメージにあります。
 あと結構なエロゲの背景で新海光線って使われることになったと思うんですけれど、個人的に印象深いのはU:strack『恋×シンアイ彼女』のそれですね。今さらなんでネタバレしますけれど、作品内容もちょっと秒速追っかけてた感じです。思い出深いですね。

 閑話休題いたしまして、新海光線ってなんかこう作品を綺麗に見せるだけではなく、どことなく情緒としてポエミィに見せる作用があると思うんですよね。実際にない光がそこらじゅう飛んでますので、なんというか、その光に意味を見出すではないんですけれど、意味が付属する光? というとしっくりくるかな。そういう語ってくる光を持つのがぼくの知っている新海作品なんですね。

 だからっつうかなんっつうか、業界としてのアレでポストジブリ(これポスト宮崎駿とは言わない)に新海誠作品が刺さったのってびっくりしました。細田守か超平和バスターズかくらいが刺さるのかなあと思っていたので。話ずれますけれど、庵野秀明作品んはポストジブリ多分ないんですね。ライバル企業はあってもそういう商品ではなくて、ただ、ポスト宮崎駿をできるとしたらこのひとだけなんだろうなとなんとなく思っています。
 これ連呼すると怒られるんですけれど、今も昔も新海誠作品ってとりわけ「絵がきれいなだけ」じゃないですか。(※あくまで個人的な感想です
 あとポエム。それのイメージでしかなかった。なにやらせても絵のきれいなポエムの作品で、そのためのマクガフィンがヒロインだったりなんとかする感じ。しかもその情緒は自分には刺さってこないんで厄介です。『秒速5センチメートル』5回くらいは観たと思うんですけれど、さいしょの「桜花抄」で満足してあとは流して観ながら、最後に山崎まさよしのミュージックビデオにするとかそんなことばっかりやってるんですね。

 で、ここまで書いて気づいたんですけれど『天気の子』の話をしていませんね。
 もうここまで書いた通り、感情的には刺さってません。しかもタチが悪いことに『秒速』とかとは別ベクトルで刺さってないのです。
 今の……というか『君の名は。』以降の新海誠の作品的なエモさって、どっちかというと超平和バスターズ的なそれなんじゃないかなあと思うんですよね。あそこの映画は未視聴ですけれど、なんかこうちょっとこじらせながらストレートに青春していく感じといいましょうやら。当方、35歳童貞、青春モノを上手く刺すにはなんとなくコツが必要な身体になってしまいまして、まあこれがエロゲだったら刺さったのかという可能性についても脳内で試算したんですけれど、これもまたやや絶望的ですね。
 知っている範囲では内容がエロゲっぽいって話をした視聴者も結構いたと思うんですけれど、まあ割と履いて捨てるくらいにはこのヒロイン像はあったと思います。っていうかアニメ絵とかアニメ映像だからそう思うだけで、己の消化してきた創作物にああいう消えていきそうなヒロイン像と、それを追いかけてなんとか捕まえる主人公ってなんども見たことあるでしょ? 思い出してください。例示はしません。各々のそれで良いんですけれど、個人的には「陽菜さんかわいい」ってのが感覚として出てこなかった、かわいくないとも思ってない、好意的には思うんですけれど、主体的にどうにかしてやりたいみたいな感覚がまるっと出なかったんですね。白基調の服が可愛いねくらいまでしか言えなかったのです。

 かわいいって消費するには二時間って短いんですね。たぶん、今まで見てきたアニメ映画全部でそう思っていると思うんですけれど、ヒロイン単体かわいいは行けた記憶がないんですよ。サービスでそう言ってることはあるかもしれませんが。
で、さっきエロゲの話が出ましたが、エロゲにしたら刺さったんじゃないんですかという試算ですね、これもまたやや絶望的です。尺的な愛着は稼げるとは思うんですけれど、さっきの話に戻って何度も見たヒロイン像じゃないですか? そして、まるっと天気の子としてエロゲにしていく上で絶望感があるのは映像が爆裂的に綺麗なことです。俺に刺さるとしたらもっと、予算潤沢じゃないほうが良かったと思います。エロゲでという試算なら、線画まんまみたいなやつに色鉛筆か水彩で彩色みたいなタイプの絵でやったほうがエモのブーストがかかりますし、そういうもののほうがぼくだけの陽菜さん、みたいになったのだと思うんですよね。それにしても、たぶん、夏美さんのほうがかわいいとか言ってたんじゃないかなあ。
 さらに話をきちんと戻して『天気の子』をアニメとして語るにしても、夏美さんのほうが愛着あります。最初にきちんと仲良くなったからかもしれないんですけれど、夏美さんの主人公への気持ちのほうが自分的には噛み合いますし、別にそのルートが見たいとはお遊び程度しか言ったり思ったりしないんですが、夏美さんの持っているキャラクターとしてのバックボーンのほうが好きだし、あのひとのおかげで帆高応援してやりたいってなったくらいです。

「陽菜さんかわいい」はね『天気の子』観ても遊び程度の気持ちでしか言わなかったと思いますし、主人公の帆高との関係性も別に「うん、カップル成立」くらいの感じです。強いて言えば凪きゅんのほうが股間にキュンキュンくるものがあったかも知れません。(今読み手さらに減ったな)

 さて、キャラ感と俺個人的な新海誠履歴の話はここまでにして、映像としての『天気の子』なんですが、爆裂的に美麗でしたね。雨粒が落ちる描写やら俯瞰的な東京やら線路駆けていくときの描写とか、そもそも最初の東京に来たぜ感のバーニラバニラ周りのあれとか、もうおら東京さ行ぎたくねえなあってなるくらいリアリティ出せてましたよね。特にディズニー的なものであるとか3Dであるとかを覗いたら、アニメーションとしてのリファレンス作品度合いは『千と千尋の神隠し』以来くらいの感じで出せてたんじゃないでしょうか。ぼく個人はリファレンスは『天気の子』でいいと思います。現時点では最高峰、と言い淀みもするんですがこれで。
 それとはまた別に映像の話で、多分『君の名は。』からそうで、今回さらにって感じですけれど、露骨な新海光線って減ったと思いませんかね?
 あれもうちょい露骨に出してくれたほうが個人的には好きです。『天気の子』も『君の名は。』も新海光線がやや折衷案的になっていて、それが個人的に惜しいですね。かといって、秒速ほどまでブーストかかってんのはさすがにお腹いっぱいなんですが、あれが映像としての一種のポエムではあるので、二時間までの映画でやり続けるならヒロインとかどうでもいいんで(と言うと全四方から殴られること請け合い)もうちょい光線をポエムっぽく使った新海誠監督最新作をなんとなく期待して感想の結びとさせていただきます。