白日朝日のえーもぺーじ

ブログタイトルほどエモエモしくはありません

ルゥシイさんの2022年

・概略

 2022年は目標を抱えずに始めた一年でしたが、納めてみると様々なことが前進した年だったと思います。ここ数年の引きこもり生活と無職生活からの脱却が知らず知らずのテーマになっていたのではないかと。

 アルコール依存症の治療病棟からの退院後数年、病気療養と名目づけてアニメ視聴と最低限の家事以外のほとんどをしない生活が続いていましたが、今年はGW前の釣具屋バイト就活時期や、この秋冬にかけての職業訓練への受験活動など今までならストレスとプレッシャーでやれなかったことに手をつけることになり、とかく今までの自分と変えるという変革段階まで持っていくことができました。

 多分その副産物ではありますが、創作に対するインプットが増えた年であったと思います。特にほぼアニメ映画限定ではありますが劇場に赴く機会がとても増えたと思います。

 

・今年のルゥシイさん的映画ベスト3

 とここからは流れるようにエンタメランキングに流れ込んでいきます。

 

1位. すずめの戸締まり

 新海誠監督ってこんなにすごかったんやなって。ほろ苦青春映画に独自の光線を与えてエモエモしくする監督というメジャー化してから初期の監督イメージと全く違う作品になっていました。

 それはまあ、同監督作品でもあり爆発的ヒット作品『君の名は』でもそうだったのだったと思いますが、とにかく自分の目から見てとても大きく変わったと思う点は、爆発的に物語構築が上手くなったという部分でしょうか。

『君の名は』の物語の見せかたはこれはこれで一級品だったと思います。同じ時代をすごす男女の体が入れ替わり、それによってお互いの抱えた問題が変容していく……と見せかけた導入部分だけでもフックがたくさんありますし、そこから実際の二人が過ごした時間軸のズレと、それによって育まれていく瀧くんと三葉の恋慕の念、大災害に対して向かっていく大きな物語への接続。とても仕掛けの楽しいアトラクションに乗るような物語の快感がありました。

 一方で、『すずめの戸締まり』という作品。こちらは物語に対する大仕掛けについては鈴芽という少女の出自にとどまっています。それ以外はいたってシンプルな鈴芽という少女の巻き込まれ型のロードムービー。始まりの時点で大きな物語に接続していた以外はそれほどキャッチーではなかったと思います。そんな作品に観客をノせていくのは、物語進行のテンポの良さ。観ていて無理のないスピードで鈴芽と草太さんの戸締まり物語は宮崎から始まり、愛媛に神戸へと進んでいきます。それは呪いで鈴芽の椅子に変えられた草太さんとダイジンの絵面の面白さだったり、戸締まり先の現地で出会う魅力的な登場人物たちとの掛け合いだったり、変化球がない代わりにとても技術を要する部分で面白さを強化して見せていたのではないかと思います。主線の物語の裏で環さんの鈴芽を追いかける物語が同時進行する、というのも技巧的だったと思いますね。

 とまあいろいろ考えて、むずかしいことが言いたいんじゃなくて、物語のリズミカルな見せ方や大きな物語や主題への接続のスムーズさで、お話へ集中させる地力のようなものが圧倒的に成長していて、すごくあっという間の視聴体験に繋がっていたと同時に、いつの間にか鈴芽と草太さん、環さんや芹澤くんの人間関係のお話も進行したりしていたりと、一石三鳥みたいにお話が進行していて楽しい。しかも大仕掛にあるメインの鈴芽のトラウマ解消への接続もきれいでよかったねという話です。

 それを新海クオリティーの超美麗映像で見せられる快感、このへんの両輪がはっきり回っているおかげで、没入感が半端なかったというわけですね。

 一作目から話が長くなり過ぎそうなので、とりあえずこの作品の感想はこのへんで。

 

2位.トップガン・マーヴェリック

 トム・クルーズがかっこよくて、それ以外は快楽的な空戦描写を楽しむ映画ですね。とりあえず、物語は前作からの相棒の息子との関係修復がメインなんですが、それはほとんどついででトム・クルーズかっこいい、迫力のあるぐるぐる視点で映される空戦映像めちゃくちゃかっこいいだけで時間が進んでいく、そんな映画です。そのため、劇場で観ることが大事。IMAXマジ快感でした。

 

3位.ぼくらのよあけ

 原作は10年以上前の今井哲也さんによるSF漫画作品ですが、原作にある友だち間の衝突やその解消によるジュヴナイル感や、宇宙船「2月の黎明号」を団地の屋上から打ち上げる視覚的快楽などを劇場アニメーションクオリティで再現以上のブーストがされていて、とてもいい映画化でした。キャラクターデザインのアップデート以外は個人的に全く不満のない映画化でしたね。

 

次点.地球外少年少女

 『電脳コイル』で数々の賞を獲得したアニメーション監督「磯光雄」の新作アニメーション。近未来の宇宙空間とAIをメインテーマにした映像作品。キッチュな近未来描写と様々なギミックによる物語の緊張感の出し方が非常に高い視聴興奮度の高い作品でしたが、終盤の物語にいささか省略感があったのでこの順位といった感じです。すごくいい作品だったんですが、同時に惜しい作品でもありました。あと、上映館数が少なすぎて劇場で観ていないというのもありますね。(そこが大きすぎる)

 

 とにもかくにも劇場映画作品としては個人的に『すずめの戸締まり』が頭ふたつくらい抜けて素晴らしい作品だったというのが体感でした。新海誠監督映像だけじゃなく物語づくりもすごいんだなって。

 

・今年のルゥシイさん的音楽ベスト5

 今年はいろいろ音楽に対する姿勢が変わって音楽視聴機会がこれまでより一気に増え、それにより聴く作品もぐっと増えました。中身に自分で発掘した作品はなくTwitterのTLで勧められていた作品がランキングのほとんどですが、それゆえ良い作品ばかりですので、今後音楽を聴く参考にでもしてください。

 

1位.There is So Much Here / Glen Phillips

 すごく耳馴染みがよくフォーク・ロックとしてポップなだけでなく、音楽的下地として軸の力強さを感じさせる部分が非常に大きな魅力となって聴かせてくれる作品です。誠実でまっすぐ、アコギや軽めのディストーションギターを中心としたアレンジの全てに嘘っぽさがなくまろやかで、美しいメロディーを聴かせるのに一切邪魔をしないそんな稀有な一作です。

 

2位.Fables from Fearless Heights / The Lickerish Quartet

 伝説的パワーポップバンド、ジェリーフィッシュからロジャー・ジョセフ・マニングJr.を中心としたメンバー3名により結成された、パワーポップバンドによる傑作パワーポップアルバム。その下地にはビートルズや初期のELO、ビッグスターなども感じたりさせますが、とにかく収録されたすべての曲がポップネスに溢れて音楽的フックにも満ち溢れており、めたくそ聴きやすくだからといって味が濃すぎず飽きさせない作品に仕上がっております。時代が時代なら語り継がれてもおかしくない素晴らしいポップアルバムです。

 

3位.結束バンド / 結束バンド

 今年放送されたアニメーション作品『ぼっち・ざ・ろっく!』の作品内バンドのアルバムとして発表されたこのアルバム、とにかくツインギターのガールズインディーギターロックバンド作品として傑作といって良いクオリティに仕上がってます。アニソン/キャラソンアルバムの枠を大きく通り越して、「ギターと孤独と蒼い惑星」のようなロックな楽曲はとにかくディストーションギターの快楽に溢れたソリッドな音像として響き、「小さな海」「フラッシュバッカー」のようなミドルテンポの曲もバンドサウンドとしてのスケール感があって、とにかく文句なくかっこよく、それでいて素晴らしくポップ。ガールズロックとしては少し外れたファンキーでAOR的ナンバーの「星座になれたら」がいちばんのお気に入りですが、作品の懐広さゆえのご愛嬌として受け取ってくださいませ。

 

4位.Tchotchke / Tchotchke

 まるでPavementの落とし子のような、ヘンテコインディーロック三人娘によるアルバム。これまたひねたメロディーを展開しつつも素晴らしくポップで聴きやすく仕上がってます。音楽的な軸はインディー・ロック~パワー・ポップだと思いますが、フレンチポップ的な味わいのある楽曲などもあり全く飽きさせません。Camera Obscuraにディストーションギターを弾かせたようなそんな作品。説明だけじゃ分かりづらいものの、とにかくポップネスに溢れたインディー・ロック傑作なので、音を聴け、音を。

 

5位.Going Places / Josh Rouse

 ほんのりレトロスペクティヴかつ温かみのあるウェルメイドなフォークポップ。どことなく初期Vampire Weekendを感じさせる曲があるのもいいけれど、とにかく良い意味で耳に邪魔な引っ掛かりがない。フォーキーななかに耳障りな音色を入れてこないアレンジの優しさややわらかさ、それがスムースなメロディーとともに耳を通ることによって、快い音楽体験ができるそんな一作です。

 

・ルゥさん的今年のアニメーション作品トップ5

 ここ数年、ワンクールに20作品くらいアニメ視聴していたので、多少は参考になると思いますが、なぜだか選考作品のクールが偏ってしまっております。そこはご愛嬌という温かい目で見て楽しんでください。

 

1位.ぼっち・ざ・ろっく!

 「最終話の最大風速なら~」とか「単純なクオリティなら~」とか様々な作品と迷いましたが、全体を通して一番楽しくクオリティの高いエンターテイメント作品としてこの作品を挙げさせてもらいました。女子高校生四人によるガールズバンドのバンド描写と日常描写をメインにした作品として、放送開始前には「令和のけいおん!」などと期待されていましたが、その期待をまるで別方向で裏切っていく作品になりましたね。

 誰ともうまく仲良くなれない陰の女の子だけれど、ギターへの熱中心はすごく高くて自分ひとりで膨大な時間をギター練習に捧げた少女、後藤ひとりちゃんの「ギター少女としてのかっこよさ」の興奮、「ひどい陰キャとしての奇怪な行動の面白さ」のコメディ的楽しさ、それと女の子同士の好意の矢印も楽しめるようなちょっとした百合作品の味にも仕上がっていて様々な角度から楽しめる作品になっていてそれがとても良かったです。ただ、作品の面白さとしての中核をなすのは前者ふたつでしょうが、それと巧みな映像技術による演奏シーン描写や演出などでとても上手く面白さがブーストされていましたね。とかくこういう場で書きあらわすには紙幅が足りないですが、多くの点で満足度が高く思い入れも強い作品でした。

 

2位.ヤマノススメ Next Summit

 これまで3期続いてきた、山ガール四人による登山アニメーションの体をとった、主役である雪村あおいと倉上ひなたのふたりのすごく濃く深い友情関係を描く高い強度の百合作品。4期となり初めて1話30分という標準的アニメーション尺を与えられましたが、そこで描かれたのは、これまでの3期までで培ってきた彼女たちの関係の成長した描写がメインでした。そうして物語の軸にははっきりとあおいの一度挫折した富士登山へのリベンジが据えられ、物語後半はそこに対するフォーカスがぐっと絞られ、その達成となる最終回は圧巻。これまでの物語をひとつに結んだような様々な仕掛けは作品ファンとしてすごく興奮させられて同時に感動もさせられ、感情がはっきりいってぐちゃぐちゃになりました。ただ初見では自然と視聴後拍手したくなるような快哉を叫びたくなるような、喝采の感情が強かったです。あくまで、冒頭4話を3期までの振り返りに使うというような構成で、はっきりいってそれが個人的にはマイナスポイントですが、それでもこの最終回の快楽に結実させた、4期全てでこの作品を見ろというような熱量の最終回が素晴らしくてこの位置にランキングさせていただきました。

 

3位.サマータイムレンダ

 この作品に対しては、個人的な愛着というのがすごく薄くて、SFサスペンスアニメーション作品としての物語評価と圧倒的な作画表現による興奮という、ほぼ単純な作品クオリティ評価としてランキングさせています。時間ループをテーマにした作品らしく、最初の数話はいささか退屈な部分もありましたが、それを乗り越えていくと作品内での敵性存在である「影」とのやりとりや、その正体や存在理由に向けて進んでいくミステリー的な純粋な物語の興奮が深まっていき、中盤以降は完全に目が離せない物語になり、もともと高かった作画表現もアクションシーンでガンガン活かされてゆくようになる視覚への興奮度の高さも素晴らしかったです。キャラクターも主人公を食う勢いで活躍する「影潮」という主人公慎平の死んだ幼なじみの「影(ファントム)」的存在がとにかく物語の窮地を常に逆転させてくれたり、幼なじみ恋愛描写の切なさも乗っけられてすごくエモい存在として慎平の隣にあるのが良かったです。おかげで生まれる最終話、リセットされて再構成された現実のエピローグがものすごくエモくなりました。

 まあとにかく様々な方向で隙のない傑作アニメーションに仕上がってますので、まだ触れていない方々にもとても簡単におすすめできる作品です。ハチャメチャにいいアニメ作品です。

 

4位.Do It Yourself!! ―どぅー・いっと・ゆあせるふ―

 一方でこの作品は完全に思い入れ先行での選考です。絵がとても上手でほとんどのことに物怖じしないこと以外は、不器用で空想癖持ちなところが危なっかしい女の子である結愛せるふがひょんなことから入部することになるDIY部で、様々な新たな友人を見つけていって、仲の良かった幼なじみとも関係修復していくという、シンプルなニッチ部活動ものなのですが、そのメインテーマである趣味的存在としてのDIY(工具と自分のアイデアでいろんなものを作っていく)と、アティチュードとしてのDIY(お前らの思うようにやっていけ)が両輪となって、せるふやそこに関係していく様々なキャラクターの関係構築を広げ深めてゆく癒し系ストーリーになっていくのも素晴らしかったです。同時に作品内でのDIY的ものづくり描写もガチで、満足度の高い映像作品に仕上がっているのも魅力でしたね。ただ、作品としての白眉はせるふとこれまでうまく素直に仲良くできなかった幼なじみのぷりんとのものづくりを描いた最終話でしょうか。自分たちの思い出深いベンチの一部を新たなものに作り変えていく、そうして思い出をリノベーションしていくエモさが素晴らしかったです。観てないみんなに観てほしい、秋アニメのダントツのダークホースです。

 

5位.かぐや様は告らせたい ―ウルトラロマンティック―

 これまで魅力的なラブとコメディを展開させてきた生徒会室コント作品の3期。様々な手法で飽きさせずに魅力溢れるキャラクターたちを見せてゆくのですが、この3期では元々モブ的不憫キャラであった四条眞妃ことマキちゃんが魅力的な脇役として一気に前線に出てくるのもよかったですし、学園祭である「奉心祭」での御行とかぐやだけじゃない様々なキャラクターのロマンティックなラブコメ展開に結びつけてゆく流れもとても良かったです。原作も大好きな作品でしたが、3期アニメの終盤は最終話一時間スペシャルも含めて素晴らしい満足感でとても良かったです。原作がつい最近完結しましたが、どうせならこの続編もアニメ化されるといいかも知れませんね(個人的にはストイックな話になりすぎるのであまりおすすめしてはしていません)。

 

・総評

 今年はここ数年と違ってアニメだけじゃなく音楽も楽しめて、いろんなコンテンツ欲求が上がって良かったです。来年上手く就職までいってしまうと創作物へのインプットにかける時間は減ってしまうかも知れませんが、来年は自分もより楽しく創作に向かっていきたいので、よければ見守ってくださいませ。

 数年ぶりのブログ更新ですが、気持ちとネタが続けばまた定期的にやっていきたいので、来年もこういう事ができるように前向きな気持ちで過ごせるようやっていきたいですね。

 皆さん良いお年を! みなさんの元気な姿がぼくの前向きな感情のえさになるのでよろしくお願いします。来年も元気に時間を過ごしてくださいませ!(年内にブログがアップロードできて良かったです)