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アルコール依存症病棟入院のこと その3

 入院記なのですけれど、ここからは都合第一度目の入院についての話を軸にしていきます。なぜかというと二度目がこれ「新型コロナ」に噛み当たって、おかげさまで病棟のお話としては正常なルーティーンを踏んではないというか、先述の自助グループへの行き来も実は二度目の入院中はすったり交流がありませんでした。
 要は外にあまり出ないでください状態になっていたので、このあとに語るデイケア・デイプログラムというのも二度目の入院中は関わり合いがなくなってしまうのでした。

 さて、学習期の話までいくらかしましたが、この辺まで来ると患者さんとして慣れちゃうんですよね。できるだけ計算して行動しようという考えが出てきます。お風呂や洗濯ももうプログラムと他の用事から逆算していちばん面倒くさくないルーティーン組んだりします。
 たとえば昼11時が入浴開始時間なんですが、その11時ちょうどに予約取って(自分のところは名前書いてあるマグネット貼るだけで結構です)、そこでお風呂に入って、風呂に入ったら当然そこそこの量の洗濯物が出るじゃないですか、それをまあたぶん入浴二度分まで溜め込むのかな、その風呂上がりから洗濯物を回し始めます。で、洗濯物が大体、洗濯一時間(正確には三十分なんですが、コマとして管理するイメージで)、乾燥二時間のこれも一時間で済むひとは済むんですが、乾き残し嫌なのでぼくは二時間回してました。こういうのをできるだけプログラムと上手く噛み合うように回すんですね。11時ってのが午前のプログラム終わりで、その次は12時の昼食なんで、昼食までには洗濯が終了し、乾燥スタートです。そいで、食後は14時まで中休み的になるので、それまでの時間に上手くいけば乾燥が終わっちゃうみたいな感じです。
 もっとも、それほどルーティーン完璧にいかない場合もあって、そういうときは14時のプログラムまで侵食して15時までに終わらせるみたいな流れになったりしていましたね。

 これもあくまで、週三回(火木土曜日)の男性入浴可能日についてのお話で、それ以外の日は、前回の入院期で話した行動責任範囲4だと、いかにして空いた時間……要は昼食後から午後プログラムまでの時間で買い物や散歩を効率的に行うかという話になります。行動範囲4というのは、2時間で行ける場所であれば、点呼やプログラムに遅れない限りどこでも行っても良いというものになります。なので、行くなら行くで、片道から逆算して一時間半くらいまでには戻れる行程に仕立てるんですね。ぼくの場合は片道30分くらいの本屋に行って品定め30分、帰路に30分みたいなことをやっていました。
 でーあとこれ、原則的に公共の交通機関というか、自転車まで使っちゃだめです。カチです。徒歩なんですトホホ。なので、全行程二時間弱も意外と疲れるもんなんですけれど、午後のプログラムが終わると、自助グループに行く日とかなんか宿題するとか担当看護師の面談があるとかでもなければ、もうその日の行程夕食以外全終了なんですね。だから多少疲れることやっても、もうなにも怖くありません。夕食食べて寝るまでぼうっとして寝るだけ。自助グループに行く日なら、それ18時半くらいからそれに行って21時半に戻って消灯で終了です。翌日の起床7時までまだそこそこに時間があるので、そこまでで回復できちゃうと思います。

 で、自助グループの話は前回更新でも触れたと思うんですけれど、ぼくはこれが大の苦手で、そもそも知らん子甲子園状態になるのも知ってる人の楽屋ネタ感溢れる感じになるのも苦手です。なぜなら我に陰の者気質があるからかも知れませんね。ひとりぼっちが好きなんですよ。
 だからアルコール依存症になるんだよというというのも正解で、学んだら分かりますが孤独だとかひとりになりたいとかは、依存症を助長させますというか、逆に言うと依存症の症状にもなります。ひとりで好きなことをやっていたい、は健常なものなら良し、不健全であるとかそもそも依存症患者にはやや敵ですね。できるだけひとには会うようにしておいたほうが良いです。とはいって、入院中は別に自助グループに通わずとも孤独にはなりません。入院患者がお仲間にもなりますので、だからぼくの場合は自助グループ通いは最低限でした。
 あとの暇な時間はほかの入院患者と雑談したり、これも依存症だからこその話題が飛び出してきたり、ワードとして「コントロール障害」ってのはよく出てきますね。実際、いろんな行動がコントロールできません。一度目の入院当時、暖房と湿度の兼ね合いで困ったことになって、乾いてるんですから個人的にで小型で自費でもいいから加湿器を置かせてくれよ争いにスタッフ側となったんですね。そうでもしないと別の病気するわいという話です。でも結局、加湿器の導入は通らなくて、仕方がないから自分たちがやったことは、病室のカーテンにひたすら霧吹きで霧を吹きつけて湿らせて、部屋内の湿度を上げるというものでしたね。これがすごくて「もうびしょびしょだぜお前……垂れてきちまってんじゃねえか……」っていうくらいまで霧吹きでやります。これをコントロール障害と称しながら、やってましたが、それくらいやると室内の湿度は、一発で20%くらいプラスされます。それを何度かやって湿度を60%くらいまでもっていくみたいなことやってましたね。

 とまあ盛大に本筋と話がずれたんですが、暇な時間の使い方というのはそういうのであったり、読書であったり、ぼくは病床備え付けの棚を本棚っぽく仕上げて、びっしり本で埋めていたのでそこで漫画なり小説を読んだりしていましたね。特に『惑星のさみだれ』『成恵の世界』『ばらかもん』は捗りました。あと秋山瑞人小説も『猫の地球儀』とか『イリヤの空、UFOの夏』とかですね。あとは大体切なくなっちゃうので、秋山瑞人に関しては以上です。あと田中ロミオ作品『AURA~魔竜院光牙最後の戦い~』だったり、プロジェクトイトゥーの『ハーモニー』だったりを読んでいました。捗ります。
 そんなこんなで入院時間の暇というのは過ぎていきます。ぼくは喫煙者でもないし、間食もあまり取るほうじゃなかったのでいよいよベッドから動かなかったですね。テレビも興味なしと来ている。ほんと同室の入院患者さんやたまにくる看護師さん以外と話すことがねえと来たもんだ。こんなんだと声帯もくっついちゃうかも知れません。

 さて、暇な時間の話は今後も出るんですが一旦こんなもんにしときましょう。
 それなりに入院中のカルマ(日数)を積めば、なんとびっくりひとりでの外泊とか交通機関の使用許可される二時間を超える外出が「訓練として」できるようになります。ほんと間違ってはならんのですが「訓練のためあるいは、入院中の服が足りないけれど面会に来てくれるひともいないみたいな本当に困ったとき」くらいしか外泊は許可されません。この外出外泊、前にも言いましたが毎日許可が降りるわけではなく、プログラムをこなすのに支障がないか土日祝日くらいになっています。
 外出外泊時は携帯電話スマホの所持が許可されます。そりゃそうですね。帰ってこないのに連絡つかないとか最悪なので。ぼくはこれが嬉しかったですね。外出外泊すること以上にスマホ触れるとか家に帰ってPC触れるってのが重要でした。なんにせよ大した用事がなくて、たまに友人と遊ぶか劇場に映画観に行くくらいしかやってなかったです。観に行ったのは『メイドインアビス~深き魂の黎明~』ですね。原作もしっかり読んでいるくらいのファンなんですが良かったです。これについての話は脱線するので、ブルーレイが出たらその機会にでもやると思います。

 さて、この外出外泊ですがなにが目的かといえば酒を飲まない病院外での時間の過ごし方ですね。これなんですが、ぼくは外出でやらかしたことはないにしても、外泊に関して言えば初回入院の5度の外泊のうち4回は飲酒して帰ってきました。
 入院に対する姿勢としては真面目なのに、アルコールに逆らえるかというのはまた別問題になります。そこで気合いが足りないと言うひともいるかも知れませんが、アルコール依存症者がお酒を飲むというのはこれは気合いの問題ではありません。依存症の症状なのです。だから気にせず飲めよって話でも反省や対策を取らずにやっていいよというわけでもないんですが、もうこれ、飲まない状態をこそよく頑張っているね、っていう脳の状態になっています。普通が「飲む」に切り替わっていて、「飲まない」は普通に逆らうというとこに来てます。だからこそ依存症なんですね。

 だから、外泊時なにも対策を立てなかったかというとそれはなくて、たとえば「抗酒剤」。これ三種類くらいあるんですが、そのうち「シアナマイド」と「ノックビン」というのは効果の期間に違いがあるのですが、働きとしては同じで、お酒を少量でも飲むとちょうど最悪な感じの悪い酔い方をして、しこたま身体的にきつくなるというものですね。これを服用してしこたまお酒を飲むとそれこそ自分の意志関係なく病院送りになります。それで3つ目がレグテクトというやつでこれが効果的に分かりづらくて、継続的な服用で強い「飲みたいぞ」という「渇望」を20%くらい抑えてくれるようなお薬になります。80%くらいまで飲みたいひとが60%、40%くらいのひとは20%くらいに抑えられるのかも知れません。そしてぼくは入院時全部試しました。その上で打率八割の再飲酒を記録しているわけですね。
 特にシアナマイドを飲んでの飲酒とか気分も体調も最悪になるし、自傷行為と変わりません。そうと分かった上で飲みたさが勝ってしまうのです。レグテクトに関しては一説によると効きはじめが数ヶ月かからないと実感できないかも知れない類で、これは参考になりません。特に最初の入院中は特に体感できませんでした。そして、外泊を成功させるための努力に戻るんですが、入院計画表をすごくしっかり書いたりとかもうほんと隙がないんじゃないかと思うくらい書き込んで、外泊に挑むんですけれど、どっかの段階でずっこけるんですね。『メイドインアビス』劇場版観に行った回も、飲酒可能な劇場だったので劇場で飲酒欲求が来たの我慢はしたものの、家に帰って結局飲酒してます。それも抗酒剤全部試している状態ですね。
 外泊失敗するひとはそのくらい失敗します。おかげで、初回入院のときは飲酒のペナルティ食ってほとんどの期間行動責任範囲2固定でした。前回更新で言いましたが2は病院建物以外動けません。ただこれ、ぼくが喫煙者でないというのもあって、強烈には苦になりませんでした。喫煙者のひとは喫煙自体は可能な行動範囲なんですけれど、タバコを買いに行けなくなるに等しい行動範囲で、三種類くらいまで売店にはタバコの品揃えはあるのですが、大体「わかば」とかそのあたりでとてもじゃないですが正常な喫煙者は耐えられたもんじゃありません。大体の時間本を読んでいれば完結というのはぼくの通常の入院生活とそう変わったもんじゃないんですね。だからまあ、ネックは本当に頭の芯での考え方からアルコール中心というのが抜けていかないことだけで、入院生活としては意外と苦がなくこなせました。

 ただ、考え方からアルコールが抜けないというのは、入院中も困りますが、退院後というのにも問題が出て、ぼくはそこでまた失敗というか盛大な再飲酒を行って再入院となるわけですが、その件についてはまた別の機会にでもお話します。

 入院期間が9週目くらいを超えてくると、退院後にもお世話になるデイケア棟への体験という形でデイプログラムが開始されます。デイケアでやることと言えば、実際入院中にやることの延長線上の、座学ありレクリエーションありのお話なのですが、退院してしまうと入院時みたいにプログラムはこなせないので、それを入院中に体験しようというのがデイプログラムですね。参加は強制です。9週目から退院までなにはともあれこれに参加していくしかありません、参加行程は初回だけ全日で、そっからは午前のみと午後のみとありますが、まあ楽しくないひとには楽しくないですし、入院自体楽しむために来てないのでまあこなしていますねくらいの感覚になります。よっぽどの酔狂なひと以外は通常入院のプログラムをこなしていくほうが気楽でいいと思うんじゃないでしょうか。

 そしてまあ、そうして頑張って課題とかもこなしながら入院生活を過ごすとおおよそ希望するなり強く担当看護師からの要請がない限り12週で退院です。

 外出外泊で溜め込んだ荷物も整理して、身軽な状態で退院日を迎えます。
 退院日は朝礼で軽いスピーチがあるのですが、ここで泣くひともいたり、別にどうでも良さそうな感じでひとネタこいて終わるひともいたりと多様です。このへんも吾妻ひでお氏の『アル中病棟』に載っていたんじゃないかと思います。ぼくはスピーチも苦手なので、お礼コメントに終始くらいのもんでしたね。

 さて、入院から退院というのはなにやらこうちょっとした不安というか虚無感があります。これも吾妻ひでお氏の『アル中病棟』にはとても上手くというか刺さる描写がありますので、以前の日記での紹介で買い逃した方も今回是非購入しましょう。

 

  え~、このブログでの記事は入院時のことがメインなのですが、実際のところ、アルコール依存症との付き合いは退院してからが本分です。ぼくは先述の通り一回盛大に失敗して連続飲酒発作まで起こして再入院までやっています。
 それでも、二度目の退院後の今はとりあえず飲酒せずにやれています。だからこそ、こういう振り返り記事を勢いよく書けてたりもするわけですね。とはいえ、アルコールとの付き合いのお話にはまだ続きがあるので、このあとは、「アルコール依存症について」とかそんな名前で記事を継続していくおつもりです。

 さて、口酸っぱい話ですが三回めなのでちょっと省略して、みなさん、お酒はほどほどにしてください。制御できてる感覚までで止めておいてください、はっきり言いますがそれより先は異常者の行動です。