白日朝日のえーもぺーじ

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『ワールド・エレクション』をプレイしたゾ

 四年ぶりくらいのエントリがこれでいいのかってのと……

 本来ならば直前に「和香様の座する世界」をプレイしていて、そっちのほうをきちんとプレイし終えてから手をつけるべきだろうし、そもそも微妙に旧作なのになんでやという話でもありますが、信頼できるスジからの情報が二本

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ほどあって、くぱぁしていたこともあり、「ワールド・エレクション」体験版をやってみたところクルルのキャラクターと声と造形にいっぱつで持っていかれて、自分にしては珍しくDL版で即購入みたいなことをしてプレイを開始しておりました。

 Whirlpool作品って、個人的には体験版止まりだったりOHPだけ見てスルーとかが多かったんですが、はっきり言ってこのゲームはプレイして良かったですね。

 基本的なストーリーはまあ「エロゲ的でっかい学園都市」「別々の異世界が統合された世界観の現代」「そんな世界に影響を与えかねない各世界の要人(異能持ち)キャラクターたちが集まる学園」「そんな学校で行われる生徒会長選挙」という、あるっちゃあるよねという感じですが、物語の最初から主人公の「獅子堂敬」が最上位級の異能持ちと明示されているのは割と珍しいかも知れないです。

 その能力ゆえに巻き込まれたトラブルもあり、穏健めな性格とは反して主人公は校内でややアウトロー(令和にその表現でいいのか)な立場として過ごすことになるのですが、そんな彼の前に突如隕石のように落ちてきて現れた銀髪の少女が「クルル」。彼女は自分のことを「破壊神」と本人自身クエスチョンマークを浮かべながら名乗るのだが、敬とクルルの出会いは彼の学校生活をどう変えていくのか……というお話です。

 

 まあ、このあたりはOHPでも飛んでもらえれば別にネタバレでもなんでもない話なので、この続きからがネタバレもあるかも知れないプレイ感想ということでネタバレ苦手な方はお立ち去りを。ひとまず体験版段階のフックは個人的にクルルだったので、「銀髪(というか水色)」「ちょっとふしぎな」「温度低めのベタベタ系」というあたりがひっかかってクルルが気になるかたは体験版やってみてください。(あと地味に主人公を姓じゃなく名+くん付けで呼ぶのも微妙にフックな

 

 

 

 えー、もうプレイ終了(ほぼ)しているので話を総評からはじめて、そのあと時系列っぽい順序でルート単体の感想にいこうかと。

 全体でいうとけっこう面白いし、展開(エロにいたる展開は除く)も意外とバリエーションあって飽きずに楽しめました。一方で個別ルートの出来というより、ヒロインに対してこう……ノッてるかノレてないかの差がけっこう出やすいゲームだったかなあという感じでした。お互いに半分自分の世界というか領域を背負っちゃっている子がヒロインということもあって、基本的にみんなある種の「我」的なものが強いんですけれども、ヒロインが主人公を好きになって変わっていく過程というところでかわいく見えるか、変わったあとはどうなのか、というところでヒロインごとに良くも悪くも印象の差が出ているように思います。

 このバランスっていうのは好み半分みたいなところがあるので、特に言及はしません。しませんが。ミナヨサンルートでもはや自己言及されてましたが、一度のセックスの影響がちょっと強すぎでは。

 絵についてはクルル生んだだけで基本問題ないっすね。ソフィアに関してもうちょいデザイン攻めなかったほうが、伊織に関して逆に攻めたほうがキャッチーそうくらいのことしか思わなかったくらいで、このキャラクター数多い作品をよくまわしたもんだなあと思います。ここでマイナス点出せるひとなかなかいないでしょ。強いていうならバトルシーンの画がもうちょっとだけあるとリッチに見えたかなあという。

 とかく、プレイ中の安定感がすごいのは美点ですなあという感じ。作品としてのボトムが高いというか。そういうのも込み込みで良かったです。

 

 さて、この作品には先述の通り多少、ヒロインそれぞれにちょっと違う「面倒くささ」ニアリーイコール「ちょろさ」があるのですが、それが最初から利いちゃっているのがやっぱりクルルですね。(あと容姿が好み

 やっぱりこう目新しい設定って感じでもないゲームで、実際、序盤の展開もそれほど斬新や突飛だったりせず、堅実めに設定を読み手になじませていく感じなんですが、その先導役でひとつ異質というかスパイスみたいに利いているのがクルルで、まあこれ……なんでしょうね……。書き手の筆が乗っているというか、声優さんがバチッと合っているというか、絵もかわいいしというか……、まあ個人的な好みの話だけなのかもしれないので、誰にでも適用できるか分からないんですが、こう、些細なとぼけた言葉のひとつひとつとか呼吸みたいなものが、このキャラクターそのものに噛み合ってしまっている感じで、それが大体序盤からずっとべったりとそばにいることもあって、プレイ体感がめっちゃ楽しいんですよね。

 そんでまあ、クルルは基本的に主人公を「敬くん」と呼ぶわけですな。しかも大体当たり前みたいにそばにいる。はい、そこの幼なじみ好き一本取られましたね。審判見てました。主人公自身が特段拒まないこともあり、クルルって意外と駆動のしかたが仲の良いままきた幼なじみみたいな雰囲気もちょっとあったりしてね? そういうのも良かったりします。

 とはいってまあクルルだけでお話が進むわけもなく、共通ルートは選挙に向けて複数回に分けた選挙演説という名の各ヒロインのバックボーン紹介コーナーに突入していくわけですね。

 

 さて、ここからはプレイ順にヒロインの感想を書いていきたいと思います。

 

 最初にプレイしたルートは「ソフィア」ですね。(嘘です。クルルですが、いわゆるトゥルーに絡むので後回しにします)

 この辺は、順序よく真面目に攻略しようと思ったときに「まあ大体、赤髪でパッケージにでかめに描いてありそうなヒロインは先でええねん(キャッチーかつネタバレ安心キャラ的な)」みたいな謎の回路が働いたそうです。

 ソフィアは作中の魔族のえらいひとで作中最強クラスの異能保持者です。「バックボーンを持つひどく強力な実力者」ということもあり、生徒会関係なしにそもそもがふつうに権力者ですが、それゆえに並び立つものがない彼女は、単純にぼっち寄り化した敬と逆に強めのシンパシーを感じてしまったというシンプルめな結びつきですね。ただキャラクター設定ゆえにトリックスターというか、ヒロインとして見るとそもそも共通ルートからちょっと損な役回りをしていて、元々の本心の読みづらさとか周囲掻き回しぐせも相まって、ちょっと魅力が出来れなかったのかなあという感じでした。あと、エピソードの合間にセックスが雑めに挟まれるのいかん。

 ソフィア自体は嫌いなキャラクターではないんですけれど、なんかこう気持ちの変化を「魅力的に見せる」もうひとひねりがあれば、抜群に仕上がり違ったんだろうなと言う感じでした。惜しい。

 次はソフィアルート攻略後に開放される「チコ」のミニルートです。

「ガウッ♪ ガウー……」って言います。かわいいですね。

 とにかくちっこくてペット系キャラ設定なので、精神年齢低めとかロリキャラ好きとか向けなのは間違いないんですが、懐いてきてなでるだけでよろこぶ女の子好き勢にはたまりませんね。ミニルートなので内容は懐いたら行為です。雑ゆえにライトな面白さが光るのも面白いですね。

 

 そんで次が、大天使の卵として奮闘する「パーフィル」のルートです。

 天使なんですから基本は悪いことはいけないことの良い子ちゃんです。ただやっぱり見習いみたいなところもあって本人は直情的でもあるし、愛が「視」える特性ゆえに敬との関係に限らずいろんなところですぐ答えを出しがちです。そんなところに突っ込んでいくのが主題になっていくルートですね。

 ちっこいけれども頑張り屋、わからんちんども直情系、とんちんかんちん前進していくタイプなので、主人公や読み手はちょっぴり冷や冷やしてしまいますが、シナリオのところどころで、主人公に出会ってから努力して変わっていったパーフィルというひとりの女の子というのが見えて、読むほどに立体的になっていく感じがあります。そういうところで美点は感じるのですが、エピローグ抜きにしてもお話が全体的にインパクト弱くなった感は否めないかなあと感じました。個別ルート含めてパーフィル自体のキャラクターはソフィアより積極的に好きです。惜しい。

 

 それから「ファウラ」さんルート。

 苦手です、以上。だとあれなのでちょこっと書いておきます。

 造形とか性格は割と好きで、共通ルートだとそもそも早めに主人公サイドに態度を明確にして味方になってくれる良い仲間です。ただこの「良い仲間」のところをいじって、関係変化を駆動させに行くのが苦手だったのかなあと個人的には思います。エロシーンのために物語が動いちゃっている風にすら見えたというのがいちばんのわるい引っ掛かりどころかも知れません。

 このファウラさんのルートおよび設定って割と物語全体として場外というか、ヒロインとしても中心に置けない(なんか二号さんポジ)みたいな感じが強くて、どうしても弱いというか。むしろ二号さんを続けて逆転ホームランシナリオ見たくなかったかい……既プレイ者さん……という感じでした。

 あと、野趣あふれる野ションシーンのひとつでもあると思ったのですが、なかったのが個人的には痛かった。野ションもなしでなにが獣人だ。覚悟もなしに尻尾と耳を生やしているんじゃねえぞというお気持ちです。(それは偏見というものです

 

 さて、満を持してクル……その前に妹好きとして逃せない「獅子堂伊織」のルートです。

 伊織は主人公と義妹の関係にありまして、まあシンプルですが「テンプレツンデレ妹」です。当然ながら妹としてツンを持った要素には自身の背景があり……という、ところでこのあたりの処理とかが割とスムーズだったので読みやすく、本人がちゃんと兄と向き合ってしまうと甘えん坊になるから遠ざけつつ、「でもわたしがいないとお兄ちゃんはだめだから」と距離を置けないというむつかしくてむずがゆい距離感がばっちり描かれていたのもすごく良かったですね。

 頭でっかちのアホ妹。ってイメージかなあというところです。

 その魅力が発揮されるところは、やっぱり主人公との初デート周りになりますでしょうか。お兄ちゃんだしでも好きなひとだし、デート(?)だしでもなんか気取ってもあれだしで、考えてやや考えすぎてうあ~ってなっちゃう伊織の思考回路が透けて見える感じがすごく良い。

 そんでこの感覚自体もエロシーン周り含めたルート全体としてちょこちょこ散らばっているんですが、なんとも心地よくまとまっている印象です。最終的に敬と伊織の抱えていたものが互いに優しさに由来したもので、想いびとがいてさらに優しくできるようになるというのは、まあこういう異能強め設定のお話での良いカウンターでもあると思います。

 

 えー、「クルル」ルートです。

 まあクルルの魅力自体は先述した部分に結構あるし、実際トゥルールートにあたるので、物語の話メインで行きたいところですが……。この個別ルート以降の「クルル」というのは結構あやふやな存在で、共通ルート終盤で一度さらわれてから明確にズレを描かれています。そこでクルルという存在に不安を抱かせつつのSF風味カタストロフ展開を主人公がどう止めていくかというのがポイントになっていくわけですね。

「ふたりでいる時間は全部、特別だもんね」というのは、クルルルート中盤でのおべんとうピクニックデート中のセリフですが、このあたりは冗談以外の気持ちを帯びているのが見えてけっこう心に突き刺さります。

 このあといちばん好きなシーンが来るんですが、画をアップロードするのは反則なのでセリフだけ、

 

クルル「どうかな」

 

 敬がクルルに帽子をプレゼントしてかぶせただけのワンシーン。

 ここは前後の台詞も含めて最高に良いシーンなんすよね。

 そうして展開としては先述したカタストロフへと向かっていくのですが、これの解決自体は全体的にデウス・エクス・マキナマクガフィンで実質ドラゴンボール元気玉です。とはいえ、ルート最後に回して読むとなかなか感慨の湧く内容になっています。そして、特にこのルートのエピローグなあ……。

 敬とクルルが手をつなぎながら月をバックにして語る、この世界を巻き込んだドタバタ劇を結ぶ言葉たち、そのシンプルさが心に刺さる。これがあると無しで作品評価がぐっと変わるくらいの良いシーンです。

 

 勢いで書いてしまったところもあり、ところどころ語り尽くせていないところもある気はしますが、「ワールド・エレクション」クルルと伊織のかわいさだけでふつうにフルプライス元取れるゲームだと思いますね。

 

 あと、クルルルート終わったらせっかくなのでミナヨサンのミニルートもプレイしておきましょう。ああ、これがエロゲのサブルートだって気持ちになる、(否定的な意味じゃなく)とても楽しいルートです。